月の石で硯を作ったとは本当ですか?

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On-air date 2019/08/04 24:00-25:00
Guest 青柳貴史(製硯師)

岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、GROWING REED。この番組では、毎週ひとつのテーマの専門家をお呼びして、徹底的に質問。番組の終わりには、考える葦として、僕も皆さんと一緒に成長したいと思います。さて、今夜のゲストは、製硯(せいけん)師の青柳貴史(あおやぎたかし)さんです。青柳さんは、浅草で昭和14年から続く、書道用具専門店 宝研堂の四代目。製硯師とは、書道で使う硯の全てを知り尽くす、技術者を言います。さらに、日本で唯一、製硯師として中国や日本での採石調査や、様々な石での硯の製作を行う青柳さん。今夜は、硯の中に見える、宇宙についてお話をお伺いしたいと思います。 J-WAVE GROWING REED、新しい一週間、最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください。」

   *   *   *

岡田「青柳さん…実はでも、初めましてではないんですよね。」
青柳「そうなんです。」
岡田「僕が映画で…『蜩ノ記』というので…硯の監修をしていただいて…」
青柳「はい。小泉監督が、硯に拘られていて…」
岡田「うん」
青柳「あの…役所さんもいらっしゃいましたよね。」
岡田「はいはい」
青柳「蓋を開ける音、閉める音まで拘りたいということで…」
岡田「う~ん、成程。音に拘っていたんですね。」
青柳「そうなんです。木も、だから…こういう音がいいっていう…」
岡田「う~ん」
青柳「で、硯も拘りましたし。あの…幕末の硯を…時代考証もして、」
岡田「うん」
青柳「お作りしたっていう…」
岡田「僕、テレビでも、それから…なんか…ま、注目してたので、テレビで見たんですけど、」
青柳「ありがとうございます。」
岡田「もう変態ですよね。直接言うのもなんですけど(笑)」
青柳「
岡田「いや、だいぶ変態に映ってましたよ(笑)。変態っていうか…」
青柳「皆に言われるんですよねぇ…」
岡田「なんだろ…もう好き過ぎて…好き過ぎてっていうのかなぁ…石とか硯とか、その道を極め過ぎてて…日本でだって一人ですよね?今。」
青柳「製硯師っていう肩書きは日本に一人なんですね。」
岡田「それは、皆 名乗らないんですか?」
青柳「あの…」
岡田「凄い人、いるんですか?他に。このおじいちゃん…この作ってた…」
青柳「(笑)」
岡田「分かんないけど(笑)。この人たち、ヤバイんです。みたいな人は他にいるんですか?」
青柳「あ、でもね、やっぱりあの…よく僕に、青柳さんヤバイよね!変態だよね!って仰っていただけるような…ね、意見がありますけれど、そういう方向の人は僕しかいないかなぁって……そういう方向っていうのも(笑)」
岡田「(笑)」
青柳「山 行っちゃったり、いろんな硯 作ったり…」
岡田「うん」
青柳「復刻したりっていう…そういうことですね。」
岡田「ま、ちょっと知らない人も多いと思うので、製硯師の仕事を…」
青柳「はい」
岡田「お聞きしたいと思うんですけど、」
青柳「はい」
岡田「何て説明されますか?自分がやってる…仕事というか。」
青柳「はい」
岡田「今、広いですよね?硯を売ったりするだけでもなく、」
青柳「うーん…」
岡田「作ったりするだけでもなく。」
青柳「ま、調査したり…あの、石の調査…何時代の硯は、どんな石を使っていたか…どのように作られていたか…そして、今までの…いにしえの硯の調査と復刻ですね。」
岡田「昔のやつですね。」
青柳「昔の。」
岡田「はい」
青柳「で…はたまた、じゃあ、地球上のどんな所から、硯になる石って採れるのかっていう…」
岡田「うんうん…」
青柳「日本と中国のような、漢字文化圏以外の所でも、勿論採れるわけで、そういった所に石を採りに行く。探してみる。そういう、あの…ま、一言で言ってしまえば、硯のことにまつわる、総合的なスペシャリストっていう…」
岡田「うーん」
青柳「仕事だと思うんですけれど。」
岡田「石について詳し過ぎて…どこの石が、今 面白いですか?」
青柳「今ねぇ…」
岡田「日本。日本限定。日本限定で。」
青柳「日本限定ですか?」
岡田「はい。日本だと、どこの石が一番…良いですか?硯にするのは…」
青柳「僕好みなのは…宮城ですね。」
岡田「宮城。なぜ宮城?」
青柳「あの…宮城県の、石巻市の玄昌石っていう石なんですけれど、」
岡田「玄昌石…」
青柳「伊達政宗が、その当時…使っていた…」
岡田「伊達政宗が出て…(笑)、出してきます?へぇ~!」
青柳「採れていた石があるんですけど、」
岡田「はい。それ、なんで分かるんですか?伊達政宗が使っていたって…」
青柳「もう古文書に残っているんで。」
岡田「あ、残っている。」
青柳「しかも、その鉱脈は伊達政宗が、もう採っちゃダメだよ!っていうことで、オトメイシって…御留石。採石禁止っていうふうにしてしまった鉱脈があって。」
岡田「へぇ~~~」
青柳「その鉱脈が、実は最近、伊達政宗が採っちゃダメだよって言ってから、ずーっと残って来ているんですけど、震災復興のインフラ整備の為に、その鉱脈を潰しちゃうんですよ。で、伊達政宗の硯を、えーとね、仙台市が保管してるのかな?」
岡田「はい」
青柳「使っていた硯。本物を。」
岡田「ああ…」
青柳「それを完全復刻する最後のチャンスだから、その御留石を久しぶりに僕は採りに行かせていただいて、完全復刻をしてみてもいいんじゃないかっていう依頼があったので、いいタイミングで宮城に入ろうかなという…。伊達政宗が使っていた硯と同じ石で硯が作れるっていうのは、やっぱり…僕の中では結構ホットなんですけれど。」
岡田「それは、完成したんですか?」
青柳「いや、まだね、採りに行ってないんです。」
岡田「あ、まだ行ってない。」
青柳「仙台市からの許可が下りてから…」
岡田「や、凄いなぁ…」
青柳「そういう…今、僕の中で、ちょっとこう…燃え…燃えているところです。」
岡田「燃えどころですよね。」
青柳「これからやりたいという…」
岡田「じゃあ、なんか下手したら、それこそ戦国武将の…なんか…硯とか出来るわけですよね。」
青柳「あの…」
岡田「この人がこの土地で、絶対に使っていたであろう石とかで…」
青柳「そうなんですよ…だから戦国武将の、使っていた硯で、なんか戦国武将名硯列伝じゃないけど…メイケンっていうのは刀じゃなくて硯のほうですね。」
岡田「はい。石を見るですよね。」
青柳「そうですね。因みに、徳川十五代将軍をお守りした、山岡鉄舟。」
岡田「はい」
青柳「山岡鉄舟は書家でありながら、剣豪でしたけれど、彼が使っていた硯は、表面が墨を磨れるようになっていて、裏面は刀を研ぐようになってたんですよね。」
岡田「へぇ~~…研ぎ石がじゃあ…違う…?…どういうことですか?(笑)
青柳「あの(笑)、」
岡田「違う石をくっつけてたってことですか?」
青柳「いやいやいや、硯っていうのは、定義として、墨を磨りおろすことが出来る石なので、」
岡田「あ、そっか…」
青柳「だからその石の中でも、墨もおろせるし、刀も研げる石を多分使ってたんですよね。」
岡田「成程…」
青柳「僕の今の調査だと、南アルプスの、早川町の、ちょっと静岡寄りの、上流に…渓谷を上がって行った所に、それらしき石があるんですよね。」
岡田「…そういうの、どうやって見つけるんですか?」

   *   *   *

岡田「インスタ。seikenshi_official っていうアカウント名でやっていて…ここでも、なんかまぁ、ちょっと…いろいろ見れると。」
青柳「そうですね。」
岡田「もう…ほんとにいろんな所に行ってるんですね。」
青柳「うーん、あの、硯になりそうな石がある所があったら…」
岡田「なる、ならないは何ですか?あの、テレビでやってた時は音とか、ざらつきとか…舐めてましたよね?」
青柳「味も大事なんですけれど…味が大事っておかしいけど(笑)」
岡田「(笑)。食べてましたよね?石。」
青柳「あの…硯に最適な石って、地球上で、もの凄い少ない確率でしか出てないんです。」
岡田「へぇ~!全部の石が(硯に)なるわけではない?」
青柳「ないんです。」
岡田「何%ぐらいですか?」
青柳「これはねぇ…露出している地表ありますよね。」
岡田「はい」
青柳「あの…何て言うかこう…樹々が生えている所からは採れないので、もう露出してしまっている所。露出している、その表面から計算したところ、今その…何%っていう計算って難しいんですけれど、僕が早川町と、あと中国の江西省のとある一部と、北海道で僕が見つけた鉱脈の一部で計算したところ、0.0001%…地球上の。」
岡田「え…どうやって採れるんでしたっけ?岩が…あるじゃないですか。」
青柳「はい」
岡田「全部なるわけじゃなく…」
青柳「ないんです。」
岡田「どういう所が硯になる場所なんですか?」
青柳「例えば…そうですね…硯になりそうな石っていうのは、僕の場合、いろんな山地の表情を見ているので、遠間から見て、こういう山の景色ってあるんですよね。硯の石が…生まれていそうな…山の景色っていうのがあって。」
岡田「風景があるってこと…?」
青柳「風景があるんです。山の表情っていうのがあるんです。」
岡田「遠目から見ても、」
青柳「はい」
岡田「あそこ、いそうだな。って…」
青柳「山、山ですよね、それが近くになって山になりますよね。で、中に入ると、山の中になって、で、岩の前に立ちますよね、そうすると、ああ、この辺りがなるかなぁっていう…。」
岡田「へぇ~…???どういう…」
青柳「で、石の層って、もの凄く狭くて、」
岡田「ああ…断層…なってますよね。」
青柳「その中から、15センチの幅しか取れないとか。」
岡田「硯になるやつと、ならないやつの差って何ですか?表面ですか?」
青柳「えっとね…石の構造なんですけど…」
岡田「…構造、」
青柳「石の構造。」
岡田「や、コアな話になってきた構造って…石の構造って何ですか?」
青柳「堆積して、こう…じゃあ、宮城の石は8千万年ぐらいかかって地球が作った物として、で…8千万年の間、泥とか砂が静々と堆積して行って、それで固まって出来るんですよね。で、その中でも、熱圧縮…圧縮したり、あとは水の中で水圧で潰されたり、様々な外圧でギューッと詰まるんですけど、」
岡田「はい」
青柳「その中でも、優秀な泥とか、優秀な砂…そういった物が重なって…硯になるきっかけを地球が作ってくれた石…」
岡田「成程。」
青柳「っていうのがあるんですよね。」
岡田「奇跡的に出来るってことなんですね?」
青柳「そうなんです。」
岡田「じゃあ、なんか…適当に掘って…岩盤の所を掘って見つけるわけではないっていうことですよね?むき出しの所しか、分かんないってことですか?」
青柳「あの…手当たり次第に掘っても、殆ど硯にはならないんですよね。だから新しい鉱脈を見つけようと思ったら、川に入って行って、で…そこの営林課の人たちが…各都道府県の営林課の人たちが、大体こういう山で、ここの辺りはこういう石が採れますっていうマップをお持ちなので、」
岡田「う~ん」
青柳「その営林課の方に、地図を貸していただいて、じゃあ、この辺りまで行ってみたいんですって…まず先に、見知らぬ土地の場合には、川から入って行って…川にはほら、上流から落ちて来た石が流れて来ますから、」
岡田「はい」
青柳「川は特に、その先の上流の石の…まぁ、博物館みたいになっていて、そこで拾っては、硯に変えて行って…それで、硯になりそうな石が出たら、このぐらいまでちいさく転がって来ているから、相当上流にあるなぁとか。」
岡田「はぁ~…」
青柳「それで、沢を上って行って、この辺りかなって当たりを付けて。」
岡田「ほぉ~」
青柳「で、石を…そこから山の方にアプローチしていくっていう採り方なんですけれど。」
岡田「面白いなぁ…。今日はなんかいろいろ…持って来ていただいているんですけども、」
青柳「はい」
岡田「これはまず…でもなんか、コラボして作ったやつですよね。」
青柳「これはあの…アウトドアメーカーさんのモンベルさんから…発売になっている…野筆っていう…」
岡田「あ、もう発売してるんですね?」
青柳「そうなんです。4月から発売になっていまして。今ね、完売してしまっていて…」
岡田「へぇ~~」
青柳「予約受付中っていうところなんですけど。」
岡田「野筆。」
青柳「はい」
岡田「外で?」
青柳「そうですね。」
岡田「書が出来るよと。」
青柳「あの…山で、沢の水を汲んで、そこで一筆書きましょうよ。っていう…」
岡田「…これは…」
青柳「先程お話をした、玄昌石です。」
岡田「玄昌石。」
青柳「宮城県石巻市。」
岡田「ちょっと触っていいですか?」
青柳「どうぞどうぞ。」
岡田「宮城産の…」
青柳「因みにそれ、取り外さなくても使えるんですよ。そのまんま。」
岡田「これ、付けたままですよね?」
青柳「つけたまんま。それ、僕が普段使ってるんで、ちょっと汚くなっちゃってますけど…」
岡田「へぇ~…これは、どうやって見分けるんですか?」
青柳「石ですか?」
岡田「うん」
青柳「宮城はねぇ、あの…玄昌石の採れる山って、もう決まっていて、そこはね、洞窟で掘り進めるんじゃなくて、なんて言うのかな…露天掘りって言って、山を崩して採って行くので、もうそこから採れるものは、まんべんなくそういう石になるんですよ。硯になるんですね。」
岡田「硯って、言うと、こう…顕微鏡とかで見ると、ボコボコしているわけですよね?」
青柳「微妙な、ちっちゃなギザギザがあって…そのギザギザを作るのが職人さんの腕なんですよ。」
岡田「作ってんすか? それ。」
青柳「あれはね、普通に磨いてしまうと、ツルンツルンになっちゃうんです。」
岡田「へぇ~~~。作ってんだぁ…」
青柳「それを、細かいギザギザを…」
岡田「元々あるからそれになっているわけじゃなくて、」
青柳「うん」
岡田「ギザギザを作ってるんですか?」
青柳「えーと、元々、石の中にある、ギザギザになる物っていうのがあるんですけど、それをこう…何て言うのかな…研ぐことで、立ててあげるんですね。切れ味をこう…良くしてあげるっていう…」

   *   *   *

岡田「話 飛びますけど、」
青柳「はい」
岡田「何歳からそれ、やりたかったんですか?もう家がそうなんでしたっけ?」
青柳「僕はあの…家がそうなので、」
岡田「そうか…」
青柳「父方が硯職人で、母方の方が書家だったので、どっちに行っても硯があったので。」
岡田「そっか…じゃあ近かったんですね。」
青柳「いつかはやろうかなと思ってましたけれど。」
岡田「分かったんですか?子供の頃から、これは…良い硯だな…」
青柳「子供の頃は全然分かんなかったですよ、はっきり言って。ただ、小学校でお習字の授業をやってても…今思ってみれば、僕だけ良い道具使ってたなって思いますよね(笑)」
岡田「あ、全然違う(笑)」
青柳「多分、違ったと思うんですよね(^^)」
岡田「へぇ~」
青柳「因みに、それだと水を2、3滴垂らして…あの…」
岡田「いいですか?」
青柳「いいですいいです。これね、魚の水滴…これ使ってください。水入ってるかな?」
岡田「いや、ちょっと入ってないんで…入れていいですか?」
青柳「はい。で、2、3滴垂らして、えー…本当にもうね…どうだろう…1分も磨れば結構濃い墨が出来ますね。…あ、もうそんなもんですね。」
岡田「うん…」
青柳「はい。」
岡田「え、こんな少なくていいんですか?」
青柳「はい」
岡田「俺、やっぱ小学校の時、墨汁を入れてたイメージがあるから、」
青柳「そうですよね。これはもうね、基本的な概念としては、書く分だけ磨るっていう概念なんです。」
岡田「う~ん…」
青柳「小学校の時って、あの…墨を溜める所があったじゃないですか。」
岡田「はい」
青柳「あそこに、水を並々入れて、」
岡田「入れてました。」
青柳「あれ、真っ黒になるまで磨ろうとしてたじゃないですか。」
岡田「はい」
青柳「あれはでも45分の授業じゃ出来ないですね。」
岡田「ああ…」
青柳「基本的に。墨汁を使わないと。間に合わないかもしれない。」
岡田「磨り方は?もう…平均…きれいに…垂直に…(笑)、」
青柳「えっとね、それ…これ、縁の無い硯なんで、のびのびやるとこぼれちゃうんで、小さなのの字を書くように…」
岡田「のの字」
青柳「はい」
岡田「あ…もう出て来るんですね。」
青柳「そうですね。小さなのの字を書くように…そこで、の、の、の、のと書いていると…」
岡田「ああ、でも出て来る。凄い。」
青柳「今、磨っている音がシャーシャーってしてますけど…」
岡田「…ちょっと音、聞こえるかな…………あ、してる。」
青柳「あ、してるみたいですね(^^)」
岡田「…シャカシャカシャカ。」
青柳「これが、磨墨音(まぼくおん)って言って、」
岡田「磨墨 !?」
青柳「うん。ちゃんと墨をかんでる音ですね。」
岡田「……ああ、でもなんかやっぱ止まるんですよね。」
青柳「ちゃんと墨をかんでいると、そういうふうに…キュッキュッていう音もしますし、シャッシャッて音もしますね。」
岡田「う~ん…」
青柳「でね、あの…少し良い香りがしてくるんですね。」
岡田「…あっ、ほんとだ!」
青柳「中に香料が入っているので。なんか、落ち着きませんか?」
岡田「でも…青柳さん、付けてないですか?これ。」
青柳「僕は…似た匂いがしてるんですけど…」
岡田「それ香水ですか?」
青柳「いやいや、清め香って言って、あの…」
岡田「あ、清め香なんですね。」
青柳「はい」
岡田「…へぇ~…良い匂い。」
青柳「懐かしい匂いっていいますけど…」
岡田「懐かしい。懐かしい匂い。」
青柳「これね、発売した当時…5月のゴールデンウイークの時に、#野筆で、いろんな方が山で書いて…インスタグラムに載せてて…」
岡田「へぇ~…楽しいですよね。」
青柳「うん。」
岡田「墨いいですね、良い匂いがして。ほのかな…ほのかに良い匂いがするというか…」
青柳「じゃああの…現代の剣豪の…岡田さんに…」
岡田「い…いつの間にか剣豪になっちゃた(笑)
青柳「(笑)」
岡田「いつの間にか剣豪になっちゃった
青柳「いやいや、僕の中では剣豪ですから(^^)。あの…伊達政宗の硯を作りますけど、」
岡田「はい」
青柳「伊達政宗の硯を作ったあとに、現代の剣豪、岡田の硯を作りたいですね。この野筆に入る。」
岡田「作ってくれますか?でもいっぱい作ってますよね?市川猿之助さんの…どうですか?猿之助さん。」
青柳「猿之助さんは、ガチで使われているので、本当に普段からよく書かれる方で、だからあの…実用に特化していて、家宝に出来る物を一個作ってほしいっていうふうに仰ってくださったんで、それでお作りしたのがあったんですね。」
岡田「へぇ~…」
青柳「あとは、夏目漱石の硯を復刻するっていうのが…とあるテレビになりましたけど。」
岡田「へぇ~…」
青柳「あの復刻っていうのは、やっぱり難しいんですよね。」
岡田「それは、何か元ネタがあって…?」
青柳「はい」
岡田「復刻に入るんですか?」
青柳「元々、使っていた夏目漱石の硯があって、それを、形だけ真似るんじゃなくて、えー…その当時の名工と呼ばれている人たちが作ったらどうなるのか?っていうところを考えて、その手や、癖を真似て作るという…」
岡田「ああ…難しい…」
青柳「なので3Dプリンターで作るっていうようなのとは、訳が違って。側だけ合っていればいいっていうんじゃなくて、」
岡田「うんうん」
青柳「その当時、二つ作られたと思われるような物を作るということですね。」
岡田「どうやって作って行くんですか?これ、道具ですよね?」
青柳「そうですね。今日お持ちした…これが僕が使っている、鑿(のみ)の一つなんですけれど、これあの…タンガロイっていう刃なんです。長さにして、大体…柄から刃先までで30センチぐらいなんですけれど、この刃先は炭化タングステンと錫の合金で…」
岡田「はい」
青柳「当時、ミサイルの弾頭に使っていた金属なんですね。」
岡田「ああ…」
青柳「で、これ…手は切れないんですよ。鈍くて。でも、石には作用するもので。」
岡田「へぇ~~」
青柳「これを、肩に当てて、ここに当てて、で…石を、」
岡田「止めて…」
青柳「抱え込んでしまって、体重で持って行くっていう…」
岡田「成程…座って、」
青柳「そうですね。削岩するという物なんですけれど。」
岡田「凄いなぁ…あ、結構しっかり重いんですね。」
青柳「そうですね。」
岡田「思ってたより重さがしっかりあるんですね。」
青柳「ただやっぱりあの…猿之助さんの硯を彫っている時に、その柄が折れたんですよね。」
岡田「これ?」
青柳「だから硬い石の場合には、それ自体も折れちゃうこともあって…」
岡田「へぇ~…」
青柳「こう…彫ってて、メリメリメリメリッて折れてしまうこともあって、」
岡田「木が?」
青柳「その柄ですね。柄の木が。」
岡田「柄の木が。」
青柳「うん」
岡田「凄いな…どんな力で…体で彫らないと…彫れないですよね?もちろん石だから…」
青柳「相手は石ですし…その…1センチ彫るだけでも大変ですねって言いますけれど、地球があの硯の石を作るのに1センチに多分、何万年ってかかっているじゃないですか。何万年じゃないですね、きっと。」
岡田「あ、その石が出来るのに?」
青柳「地球が石を…その石を作るまでに、何万年…何十万年ってかかっていると思うので、そこを自分の手で数時間で彫ろうっていうのが、まぁ、ちょっとね、無理な話で…。多少時間がかかってもしょうがないものだと思うんですけれど。」
岡田「うーん…機械でやるのとでは、また違いますか?」
青柳「あの、機械で彫っている所もあるんですけど、これ、僕の…一つのポリシーで、石にあんまりストレスをかけたくないんです。」
岡田「…どういうこと?人の手の方がストレスがかからないってことですか?」
青柳「あの…グラインダーとか…歯医者さんが使っているようなグラインダーとか、ああいうのでこう…ダイアモンドをはめて、ガリガリガリッて行くと、早く行くんですけど、見えない所に振動と圧がかかると、見えない所にヒビが入るかもしれないので、」
岡田「成程。」
青柳「やっぱり硯は、一度作ったら、それは千年先二千年先まで使われて行くものなので、僕がもう死んでしまったあとも、子々孫々使ってもらえる物を作ることが前提なんですね。」
岡田「一硯…何時間で出来ます?…何日?」
青柳「僕…なんか前にテレビの番組で、タイムトライアルみたいなのをやって、ま…良い硯かは別として、数時間で出来るんですけれど、でもやっぱり…ちゃんとした物を世の中に生み出したいなっていう…石を調理して差し上げたいので、」
岡田「成程…」
青柳「そうすると、やっぱり…」
岡田「調理してる感じなんですね。」
青柳「そうですね、やっぱり3、4か月はいただきたいんですよね。」
岡田「へぇ~…」
青柳「長いものは一年二年かかりますし。」

   *   *   *

青柳「今、墨を磨られてみて、どうでした?」
岡田「なんかね…突き詰めてみたいなとは思います。」
青柳「うん…」
岡田「なんか、書の世界とか…芸術があるじゃないですか、やっぱり。この世界には。それを知りたいなと思うし、」
青柳「うん」
岡田「でも、なかなかこう…知らない世界というか…でもなんかこう…美意識とか美しさとかっていうことが、凄く詰まっているし、そういうことが知りたいですけどね、なんか。」
青柳「なんかでも、そうやって、あの…知りたいって…ね、言ってくださるご意見とかがあった場合に、こういう野筆みたいに、アウトドアメーカーとかで出来ると、何て言うのかな…あの、書道用具専門店に入ると緊張しちゃうっていう方もいらっしゃるんで、」
岡田「うん」
青柳「で、モンベルさんだったら、わりと入りやすいっていうことで、これ、すごく手に取りたいなっていう方がいらっしゃったので、そういうあの…ほんとは出来たらいいんだけどなっていのを満たしてくれる物になるのかもしれないですね。」
岡田「うーん」
青柳「僕が作って来た硯の中でも、この野筆って、ちょっと変化球でしたけれど、物意外に、事を作り上げたような…いろんな方が、硯を携帯して、墨を磨って、字を書くっていう…それを身近にして差し上げられることを作ったような製品だと思うんですね。」
岡田「う~ん…。硯を作る時に、」
青柳「ええ」
岡田「人によって、こういう感じかなとかっていうのは変えたりはするんですか?」
青柳「ありますあります。」
岡田「例えば僕だったら、どういうのになります?」
青柳「あの…実際、その方にとって、ピンと来る石ってあるんです。これ、僕ね、たくさんの硯をいろんな方にお渡しして来て、思ったんですけど、うーん…その方にピッタリの石ってあるんですよ。なんかシャーマニックな言い方に聞こえちゃいますけど。あの…なんとなく、持たれている様子が、しっくり来る。それは僕が感じることですけど、逆に、もっと構造計算的に、例えば岡田さんがお持ちになるということだったら、僕は何か…石はね、いろんな物が選べると思うんですよね。あとは今、磨られている時の、手のストロークとか、そういったものもあるので、ご自身の手のストロークに合った大きさの…」
岡田「ええええーっ、」
青柳「硯で。で、もう少し造形的に工夫して差し上げると…硯が手に吸い付いて来るように…多分墨をおろしてくれると思うので、」
岡田「吸い付いて来るんですね?」
青柳「だから岡田さんの手の中から、こぼれ落ちる気配がない。」
岡田「ああ…」
青柳「そういう硯を作ることが…オーダーメイドで僕はお受けしていますけど、大事なことだと思っているんですよね。」
岡田「何個ぐらい抱えてるんですか?今。」
青柳「難題があって…この間、とある番組で、月の石で…月の石で作ってほしいっていうの、あるんですよね。」
岡田「観ました、その番組。」
青柳「月の石はそうそう買えないですし、」
岡田「結構しますよね。」
青柳「高いじゃないですか。」
岡田「300万とか…小っちゃいのでも…」
青柳「そうなんですねぇ…で、またあの…月の石の難しい点が、僕は地球の石に関しては、わりと…経験もありますし、この刀で彫れるんですけど、月の石は、この刀が通らなかったんです。」
岡田「へぇ~~~」
青柳「歯が立たなくて。だから地球外の鉱物に対して、僕はまだ未熟なので…」
岡田「何て言えばいいのかな…それはそうじゃないですか。それはだって…やったことないし…」
青柳「あの…もう理屈抜きで、その石に対する、向き合い方とか…」
岡田「ああ…」
青柳「それがまだ出来上がってないので、月の石のオーダーは、お受けしたんですけれど、ちょっと待ってくださいと。もう少し隕石とか、安い物で地球外の鉱物で、僕がその…地球に無い石の取り組みをもう少し経験を積んでから取り掛かりますのでっていうことで、待っていただいているんですけど…」
岡田「へぇ~…」
青柳「あとはわりとまともな…まともなというか、あの…」
岡田「月の石でやってくれとかはないんですね。」
青柳「そうですね。変化球で月の石がありましたけど。」
岡田「へぇ~…」
青柳「あとは、あの…チベットの石とか…」
岡田「石を持って来る人もいるんですか?」
青柳「いますいます。この間、チベットに登山に行って、そこで買った石…貰った石があるから、作ってほしいとか。」
岡田「これで出来ますか?みたいな…」
青柳「出来ない物もあったんですけど、何点かなる石があったんで…ま、最適な石じゃないけれど…」
岡田「出来なくはないかもなっていう…」
青柳「ご本人にとっても…思い出の石なので、お作りしましょうって…。」
岡田「へぇ~…」
青柳「それこそほら、エベレストに行かれた時とか…」
岡田「そうですね…」
青柳「石とか持って来なかったんですか?」
岡田「小っちゃいのは持って帰りましたけど…」
青柳「どのぐらいの大きさですか?」
岡田「このぐらいです。」
青柳「出来ます出来ます。」
岡田「マジすか。」
青柳「(笑)」
岡田「へぇ~~~」
青柳「月の石も、こんなもんでしたし。」
岡田「あ、ほんとにね、親指の先ぐらいですけど…」
青柳「でも、これで充分、墨を磨って字は書けるんで。」
岡田「あ、マジすか?」
青柳「充分です。さらに、例えば…ね、想い出の石があったら、そこに硯の形だけ作ってあげて、指輪みたいに作ってあげたら、指にはめて磨れるじゃないですか、こうやって。」
岡田「指輪硯が(笑)」
青柳「指輪硯(笑)」
岡田「指輪硯が出来るか…成程。」
青柳「小っちゃい硯に関しては、そういう発想もあっていいと思うんですよね。」
岡田「そうですね。何本かで挟めれば…作れますもんね…」
青柳「僕ね、あの…ちょっと話逸れちゃいますけど、タクシーに乗った時に、よく言われるんですけど、お客さん、なんか刃物を使っている仕事をされてません?って言われるんです。」
岡田「うーん」
青柳「外科医ですかね?とか、板さんですか?とか。」
岡田「ああ…」
青柳「なんか、タクシーの運転手さんって、そういうのよく見てますよね。」
岡田「ああ、確かに。見てるんでしょうね。」
青柳「刃物は刃物なんですけどね…ちょっと違うんですよね…」
岡田「独特なあれがあるんでしょうね、きっと。」
青柳「危ない感じですよね(笑)」
岡田「刃物の…多分、刃物を使っている人の、結構レベルが高い人の…醸し出す空気があるんですよ、多分。」
青柳「あの…」
岡田「皆使ってたら出て来るわけではないと思いますけど。」
青柳「前にね、山本周五郎だったかなぁ…本に書いてあったんですけど、ちょっとね、いい言葉があって、侍が…侍の話だったんですけど、刀に習熟した人は、持っている物が刀から鍬に変わっても、同じなんだっていうセリフがあったんですね。」
岡田「うんうんうん」
青柳「だからその刀ではなくて、鍬を持っても刀で練習してきたこと…鍛錬してきたことは、そのまま畑仕事にも活かされるんじゃないかという話がありましたけど、それも…一つ言えることなのかなと…」
岡田「うーん」
青柳「感じたりもしております。」
岡田「じゃあ…青柳さんが、これから作ってみたい物っていうと…何ですか?」
青柳「いろいろ考えれば出て来るんですけど、あの…ちょっと抽象的な言い方ですけど、山から…僕、山に手を差し込んで石を採って来て、それを僕の作業場で調理して硯にして差し上げるっていうことをしてますけれど、何かね…山からそのまま出て来た硯みたいな…っていうのは、山に手を差し込んで、抜き出して、砂をパタパタ叩いたら、硯の形になりました。みたいな…」
岡田「う~ん」
青柳「人が、如何に手を加えていない…けれど、自然の、普遍的な美しさを存分に味わうことが出来、そして、1500年…硯の形が出来てから、そのぐらい経ちますけれど、1500年間、培われて来た、用の美ですね。磨るということに特化した用の美をきちんと携えた、硯。本当にシンプルな物かもしれないですけれど、そういった物が作れたら、石を活かしきれた硯っていうものが出来るんじゃないかなっていう…。で、いつの日か、それを山に返してみたいですね。」
岡田「(笑)」
青柳「どのぐらいで山に戻るのか…」
岡田「もう、行き着いてんなぁ…やっぱりもう、行き着いちゃってますね(^^)」
青柳「なんか、どう…」
岡田「おいくつでしたっけ?」
青柳「40です
岡田「40かぁ…どうなるんすかね?56とか7とかになったら。」
青柳「山に…硯を捨てに行ってるおじさんに…」
岡田「カアァーッ!とか言ってんじゃないですか?(笑)」
青柳「(笑)」
岡田「カアァーッ!とか言って(笑)、完成だーッ!つって…やってそうですよね(^^)」
青柳「でもやっぱり硯って、それだけ自然で出来ている物で、面白いなと思うんで…。ちょうど、秋に個展をしようかと思ってて、その時に、少しこう…何て言うのかな…僕なりの挑戦をしてみようかなと思うので…。」

   *   *   *

岡田「岡田准一がお送りしている、J-WAVE GROWING REED。今夜は、製硯師の青柳貴史さんにお話をお伺いしてきました。ということで…やっぱりなんか、深いですよねぇ。ちょっとね、でも青柳さんはねぇ、なんか…あれなんですよ…極めている、なんか…目線と空気がある人なんですよね。なんかやっぱり、あの…刃物を持ってる仕事をされていますか?って言われるのが分かる…やっぱり、なんか拘って拘って行き着いた先の、なんか…ちょっと…コアな所を見ている…視点の目線というか。たまにね、そういう方…僕も何人かお会いしますけど、そういうなんか…コアな所に行き着いている目線がある人で。楽しみですよね。どういうふうに今後なられて…秋に個展をやられるって言ってたけど、どんな作品がね、その個展で並ぶのか楽しみですし。ぜひ皆さんも、チェックしてみてください。」



~ON AIR SONG~
『EVERYTHING』 RADIO CITIZEN
『STEPPING STONES』 G.LOVE AND SPECIAL SAUCE
『ASSUME FORM』 JAMES BLAKE
『MANKIND』 JAMIE CULLUM
『JAPAN』 TYCHO
『I AM A ROCK』SIMON AND GARFUNKEL

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