映画に対する情熱を教えて下さい
On-air date 2012/08/26 24:00-25:00
Guest 滝田洋二郎 (監督/脚本)
岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、GROWING REED。この番組では、毎週ひとつのテーマの専門家をお呼びして徹底的に質問。番組の終わりには、考える葦として僕も皆さんと一緒に成長したいと思っています。
今夜のゲストは、映画監督の滝田洋二郎(たきたようじろう)さんです。滝田監督は、1986年に公開された映画『コミック雑誌なんかいらない ! 』を監督。『病院へ行こう』、『陰陽師』、『壬生義士伝』など、数々の作品を世に送り出し、2008年公開『おくりびと』で第81回米国アカデミー賞外国語映画賞を獲得。日本映画界を代表する映画監督のお一人です。そしてこの秋に公開となります、9月15日に公開です。映画『天地明察』では僕もご一緒させていただいています。ほんとにあの、滝田監督というのはもうエネルギッシュで、いろいろこう…経験して来られた方という感じがします。そういう方ですので、えー、今日はですね、滝田監督のことを存分に聞いて、どういう人が『天地明察』を作っているのかっていうのをお聞きできればいいなぁと、すごく思っています。今夜はですね、滝田監督の映画への情熱などを伺っていきたいと思います。J-WAVE GROWING REED 新しい一週間最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください。」
* * *
岡田「あの、僕がですね、」
滝田「はい」
岡田「監督とこう…お会いして思ったのは、もの凄いエネルギッシュな…監督っていうイメージが、ものすごいあるんですよ」
滝田「そうですか?」
岡田「もう現場でだって、疲れなんか知らない、みたいな…」
滝田「(笑)」
岡田「(笑)、感じじゃないですか」
滝田「現場やってると、ね。幸せだから。」
岡田「そうなんですよ、」
滝田「疲れてる場合じゃないだろうって感じですね」
岡田「ずっと、本当に幸せだぁっていう感じで現場でいらっしゃって。もうあの、楽しくてしょうがないと。」
滝田「楽しいですね」
岡田「感じじゃないですか(^^)」
滝田「はい」
岡田「でなんか、あの…なんていうのかな、もうなんか、僕が言うのも失礼かもしれないですけど、面白いおもちゃをもらって、」
滝田「あー」
岡田「遊んでる…子どものような、」
滝田「はいはい」
岡田「感じがする、瞬間が何回もあったんですよ、現場で」
滝田「ああ、そうですか」
岡田「そうです。だからそのエネルギーというか、」
滝田「うん」
岡田「その持っているものっていうのが…なんて素敵な人なんだっていうのが、現場の時の…」
滝田「へぇー」
岡田「イメージなんですけども」
滝田「でもそれまでに、けっこう悩んだり苦しんだりしてるから」
岡田「それはあの、撮影中っていうことで?」
滝田「じゃなくて」
岡田「それとも今までずーっとこう…監督をやられてきてっていうことですか?」
滝田「うん、それもそうだし、各作品の(撮影)前は…この映画ってどこへ行くんだろう?っていうのはなかなか見つけづらいっていうか…」
岡田「『天地明察』のときは、撮影前は相当悩まれたんですか?」
滝田「うん、やっぱりこう…要素が多いじゃないですか。描かなければいけない要素が」
岡田「はい」
滝田「多いんだけど、分かりやすくシンプルにしながら、やっぱりどうやってこう…緩急つけながらお客さんに伝わって行くのかなーみたいな全体感と、現場は具体的にどうやって行くかっていうことなんだけど、その…正解がないじゃないですか」
岡田「…この仕事というか」
滝田「仕事。映画を作ること」
岡田「映画を作る…」
滝田「作り方も含めて」
岡田「はい」
滝田「だからこそ自分の作り方みたいなものに拘ったり、何を撮るかっていうことに拘る」
岡田「うん」
滝田「シンプルにそこだけを拘れば、あとは抜け切れば楽しくなるっていうか。それを見つけるために現場をやってるみたいな感じですかね」
岡田「うーん。最初にお会いした時に、『壊して行きましょう』と」
滝田「はいはい。そうですね」
岡田「言っていただいたのを覚えてますか?」
滝田「覚えてますよ」
岡田「最初に、しょっぱなに会った時に、いろいろありますけど、まず壊して、現場でもホントに…なんだろ、生まれてくるもの…?っていうのを撮っていきましょうっていうのが、すごく印象的だったんですけど」
滝田「うん。どうしてもシナリオ通りにやろうとか、もう既に何かにこう…呪縛されてるみたいなとこってあると思うんですよね、映画作るときに」
岡田「はい」
滝田「じゃなくて、映画は一人で作ってるわけじゃないから、僕はこう思うっていう形がシナリオに投影されているけれど、でも衣装つけて現場へ行って…あるいはその前後のシーンを撮っていると、やっぱりその通りではないものが生まれると思うんですよね」
岡田「うーん」
滝田「あるいはその人の考えてることであるとか、演技のあり方とか、なんでもいいんだけど、あるいはスタッフもそうだけど、そういう会話をし尽くして現場で何が生まれるか、あるいはロケーションならロケーションの環境もあるだろうし、その中で何かこう…あ、これだ ! って生まれた瞬間を撮り切りたい、っていうことですけど」
岡田「うーん。なんか壊して楽しもうっていう感じが、最初にぅわーっ ! ていう感じがして、」
滝田「はい」
岡田「壊そうぜ、楽しもうぜ、って」
滝田「はいはい、」
岡田「言える、監督世代のパワーってのが…。世代で区切るとちょっとアレかもしれないですけど。監督世代で、壊して楽しもうよって言われると思ってなかったんですよ、僕。」
滝田「あー。なるほど」
岡田「現場入るまで」
滝田「はい」
岡田「やっぱこう…イメージですけど、アカデミー賞監督で、」
滝田「ええ」
岡田「『おくりびと』でアカデミー賞をとられて、初めて会う時どういう監督なんだろうなー
って」
滝田「(笑)」
岡田「思うわけじゃないですか。そこでもう壊しちゃって楽しもうよぉ、みたいな感じで、とにかく楽しみましょうみたいな」
滝田「うんうん」
岡田「壊して行きましょうねぇ、みたいな感じで言っていただいたのが、」
滝田「はい」
岡田「なんて懐の深い…この世代だから言えることなのかなっていうのもすごく…なんでも受け止めるよっていう」
滝田「あ、それはあるかもしれないですね。やっぱり僕は…たぶんもうベテランの域になってるといわれているけれど、」
岡田「はい」
滝田「やっぱり若い頃からいろんな映画を撮ってきて、…映画の最終着地点ってどこだ?っていうふうに考えたときに、シナリオは一番大切だと思うんだけど、」
岡田「はい」
滝田「でもそれだけではないですよね。その現場でやることの意味っていうのは、このシナリオのこのセリフをどういうふうに言うか、あるいは言わないのか、みたいなものをどう判断していくかっていうことじゃないですか」
岡田「はい」
滝田「で、それは僕が考えることと岡田さんが考えること、あるいはスタッフが考えること、みんな違ってたほうが面白いっていうか」
岡田「うん」
滝田「自分が思った通りにならないほうが面白い…(^^)」
岡田「(笑)フフ」
滝田「要するに欲張りなんだよね。思ってる以上に面白くなってほしい!っていう…」
岡田「そこに辿り着くのって、監督では難しくないですか?例えば、もうオレの言う通りに、イメージ通りにやれよっ!みたいなこととか…」
滝田「あ、でもそれも共有してるつもりなんです」
岡田「それもありつつ…」
滝田「違えば違う…だからいっぱいやってもらっておいて、あ、やっぱり違う、やっぱりこの通り、みたいなこともあるから…」
岡田「いっぱい、そう…基本的にそうだと思うんですけど、その中でも、いろんな意見が出てきて、いろいろやったほうが面白いって…、なかなか今こう…そう思えない時代なのかなっていうか、その…いろいろ言われることもイヤになってくるというか
年を重ねてると余計イヤになってくるっつってもヘンですけど」
滝田「あー。うん。でも僕より凄いヤツっていっぱいいるわけだから」
岡田「んー」
滝田「あの…いただきます。それ、いただきますってつまり一つのことに…僕の考えてることよりもっとデカくなればそれで良し、と思ってるんで。」
岡田「うーん」
滝田「うん」
岡田「それは監督の生き様ですかね?生きてきた…」
滝田「まぁきっとそうでしょうね(^^)」
岡田「(笑)」
滝田「先が見えないから。ホントに」
岡田「監督はだって初めは…あの…81年が初めですか?監督としては」
滝田「あ、そうですね」
岡田「僕 1歳です」
滝田「1歳」
岡田「すいません(笑)ペーペーっていったらヘンですけど、あの…(僕が)1歳の時から監督をやられてる…」
滝田「1歳のときには絶対に観れない映画、撮ってました」
岡田「そうですよね?」
滝田「はい」
岡田「『痴漢女教師』ですよね」
滝田「そうです、はい」
* * *
岡田「これは何系映画っていう…」
滝田「いわゆる成人映画」
岡田「成人映画ですよね?」
滝田「はい」
岡田「成人映画とかこう…いわゆるピンク映画っていわれる…」
滝田「ピンク映画…日活ロマンポルノ含めて、」
岡田「出身っていうんですかね?」
滝田「出身ですね」
岡田「その頃、大変…大変だったっていうか、思い出っていうのって…?」
滝田「うーん、あの…『ピンク』っていわれてたから、つまり一般映画とはまったく区別差別されていて、」
岡田「うん」
滝田「例えば、作って上映しても日本映画界のリストには入ってないという」
岡田「うーん」
滝田「要するにメジャー会社のリストしかなくて、その頃…ロマンポルノは別ですけど、ピンク映画っていうのは誰が何を何本作ったかっていうのは、マニアの間では…当然その専門誌の間では分かるけれど」
岡田「うん」
滝田「日本映画の中では認められてないから。で、お金もないし時間もないから、なんかボロ雑巾のように助監督を…」
岡田「
」
滝田「(^^)やってたんだけど。でもね、みんな熱いんですよ」
岡田「うーん」
滝田「で、ピンク映画の始まりというのが、かつて大手でやってた人たちがだんだん流れて来て、テレビに行かないでフィルムでやりたいっていう人たちとかがいたんだけど、相当屈折した人たちが多くて、あるいは若い…学生運動世代の人たちもたくさんいたのね」
岡田「はい」
滝田「あるいは映画好きの、映画青年みたいな者まで。だからすごくごっちゃごちゃで熱くて。で、映画を知らない僕なんてのは最初ボロカスに言われて、人格なんかありもしませんみたいな」
岡田「(笑)、すごい時代ですよね?時代って言ったらヘンですけど、」
滝田「時代です時代です、それは」
岡田「ここ10年とかでも、大分変ったっていわれますけど、」
滝田「全然変わってるでしょうね」
岡田「もっと前って、もっとすごい時代じゃないですか」
滝田「はいはい」
岡田「ここ10年でもその…なんだろう、助監さんに怒るとかっていうことをしなくなった時代ですけど」
滝田「あー」
岡田「その前からっていったらもう、ホントに凄い…」
滝田「怒られるんじゃなくて、何をやってもボロカスな…
」
岡田「(笑)」
滝田「そいで監督との距離がありすぎて…ありすぎるって監督になれるチャンスが少ないっていう…」
岡田「はい」
滝田「だからやってて、(監督に)なれんのかどうか分かんないけど、なんかこのごっちゃごちゃの熱気の中でやってると、やっぱり面白いんですよね」
岡田「うーん」
滝田「で終わったら酒飲んですぐ…仕上げもしないで次の現場へもうたらい回しにされるんだけど、」
岡田「はい」
滝田「でも今思うと、フィルムにまみれ続ける時間…短い期間でもいいんだけど、何年かでもいいんだけど、何にも分からない時って…もうそういう時間ってのは後々すごく大切になってくるって、つまり体で全部覚えてしまう」
岡田「うーん。まみれる時間」
滝田「まみれる時間ですね、ええ。」
岡田「おー」
滝田「それが濃ければ濃いほど、ボロクソであるほど面白い(^^)」
岡田「(笑)、よくなんかその…ボロクソであるほど面白いとかって、」
滝田「今考えるとだからね、これ」
岡田「(笑)、当時は大変…」
滝田「当時は、辞めたくて…辞めたかったんだけど、」
岡田「そうなんですか?」
滝田「辞めたいっていうかね、」
岡田「ということはキツかったっていうことですよね?」
滝田「うん。しんどいのと、いろんなことがあって…あるじゃないですか、お金もないわ、プライベートな時間はないわ」
岡田「はい」
滝田「だけど、このまま辞めンのカッコ悪いしなぁーとかね。つまり自分の親も…僕は富山出身なんだけど、」
岡田「はい」
滝田「周りの人間もみーんな知ってるわけだよね、僕がピンク映画やってるってことを。要するに笑われてるわけですよ、ある意味ね」
岡田「うーん…」
滝田「そんな仕事してる、という。でも人間って、なんだろう、好意と悪意って同居してるじゃないですか」
岡田「はい」
滝田「だから上手く行ってるときは好意なんだけど、常に悪意が隣にあるっていうか」
岡田「うん…はい」
滝田「だからその…悪意みたいなものも…悪意というのかな、人間の素直な感情だとは思うんだけど」
岡田「はい」
滝田「だからこのまま辞めたらカッコ悪いなとか、とりあえず1本撮るまで、絶対やってやろう」
岡田「監督として1本やるまで」
滝田「ええ。いびられた奴…殴って終わっても面白くもなんともない…それまでの話なんで」
岡田「うーん」
滝田「で、1本。たまたまチャンスがあって、ピンチヒッターみたいなことで撮ったら、これがこの…監督という体験が、自分に…なんか新しいものをもたらしたっていうか、この瞬間というかね」
岡田「何が違ったんですか?」
滝田「つまり全然ね、映画に対する体感温度っていうものが違うんですよね」
岡田「うーん」
滝田「で、5日間ぐらい撮ってるんだけど、ほとんど一睡もしてない。毎日1時間2時間しか寝てなくてやってんだけど」
岡田「はい」
滝田「みんなもういい加減にしてくれってもうヘロヘロなんだけど、自分だけが冴えてくるんですよ。違うゾーンに入ってくるみたい。自分で言っちゃいけないけど」
岡田「はい」
滝田「なんかそういう悦びを覚えちゃったから…あの、分かりやすい性格なんで、これはもう…やめらんないよね、やっぱり。っていう感じかな(^^)」
岡田「(笑)、何の魅力があったんですか?監督っていうか、その…キツいことも乗り越えて、助監さん…スーパー助監督だったんですよね?」
滝田「全然、ですね。ダメなほうのスーパーかもしれないけど」
岡田「ホントですか(笑)、スゴイできる助監督だったっていう…」
滝田「いやいや、それね、」
岡田「噂を聞いたんですけど」
滝田「できるっていう定義みたいなことって難しいんだけど」
岡田「はい」
滝田「キチッと監督の言う通り、制作者の言う通り仕切るっていうのが優秀な助監督。って言われてたんだけど」
岡田「はい」
滝田「僕の場合はそうじゃなくて、多分…そんなことはどうでもよくて、どっちにしろ映画なんて終わるんですよ。監督がどんなに偉そうなことを言ったって、」
岡田「(笑)」
滝田「金 無くなって、時間 経ちゃあ、終わるんですよ」
岡田「はい、はい
」
滝田「それよりは、大事なときに何が言えるかとか。つまり監督もみんなも悩み出したときに、これはこっちのほうが絶対面白いんじゃないですか?とか」
岡田「うん」
滝田「方向…ある確信みたいなものをちゃんと自分で持って言えるかっていうことのほうが、僕は優秀だと思うし、」
岡田「うん」
滝田「僕の助監督もそういう人を求めたいと思ってるけど」
* * *
岡田「このリスナーとか、若い世代というか、」
滝田「はい」
岡田「多分ちょうど助監督(をやられていた頃の)…世代の人に見られている…責任を持つ一歩手前というか、…すべての責任を持つ(監督の)一歩手前みたいな方も聴かれているのも多いと思いますけど」
滝田「はい」
岡田「大事なものを選ぶ…チョイスするというか、楽しく楽しく…って段取りを早くちゃんとしなきゃ、っていうほうが良いとされる助監督の中で、大事なことをパッて言える、」
滝田「ええ」
岡田「これは面白いですよ!って言って、それを忘れなかったものってなんでですか?」
滝田「それは無責任だから言えるってこともあるんだけど」
岡田「(笑)」
滝田「あの、それが助手と監督の違いだと思うんですけども」
岡田「うん」
滝田「でも監督になった時って、さっき言った絶対的な体感温度が違うんですよ、映画に対する」
岡田「うん」
滝田「やっぱそういうもの…昔からよく…野球も一緒だと思うけど、名選手名監督にならずっていうのと、映画では、名助監督名監督にならずっていうのがなぜか…」
岡田「はい」
滝田「あったんですよ。そういえばそうだなー、俺 グズでよかったなぁと、思ってるけど(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「やっぱり優秀な人はたくさんいるんですよ」
岡田「そうですよね」
滝田「それは社会的にもね、」
岡田「ずっと助監督の方とか…(いらっしゃる)」
滝田「映画作るってそういうことじゃないだろうっていうか、やっぱりこう…一番大事なことで悩んで、決断しようとしてるときにそれを流そうとする人たちが殆どなんだけど、やっぱそんな中でこれをやんなきゃダメなんだ!っていう…それがでもホントの監督を守るための信頼関係だし、助監督の仕事だと思ってたから」
岡田「うーん。それで、ずっとやってこられて、きっかけとなったものってやっぱり『コミック雑誌なんかいらない!』ですかね?」
滝田「そうですね、『コミック雑誌なんかいらない!』っていう映画は僕にとってはとても大きな転機になりましたけど」
岡田「はい」
滝田「内田裕也さんから電話をいただいて、あるプロダクションが作った映画がテレビに売れたんで、3千万円で撮っていいよと。で、内田裕也さんと勝手に撮っててみたいな企画なのね、」
岡田「はい」
滝田「関わりたくない、みたいな(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「だからそれを作った時に…それまでは監督プロデュースなんで、自分で赤字を補填しなければならなかったんだけど」
岡田「はい」
滝田「今度は会社持ちなんで、シナリオ作ってそのまま好きに撮ってたんですね」
岡田「うーん」
滝田「そしたらいつまで経っても終わんなくて、大赤字になったけど、やっぱり映画っていつか終わるんですよ」
岡田「うん」
滝田「ええ。で、とても熱くて、自分で好きな映画だったんですけどね」
岡田「はい」
滝田「これが売れない。いろんな人が出てたり、ちょっと…社会的にダメだと」
岡田「(笑)」
滝田「でも、たまたま日本で試写をやってた時に、ニューヨークの近代美術館の人が映画祭をやるんで、これ(コミック雑誌なんかいらない!)をニューヨークに呼ぶって言ってくれたんですよね」
岡田「はい」
滝田「で、そのままニューヨーク…初めての海外旅行で。ニューヨーク行って、やってたら、なんとsold out 続いて、追加上映になって、たまたまニューヨーク・タイムズの人が批評してくれたのが良かったのもあるけど、今度はそれを見てたカンヌの人が、カンヌ映画祭に出すって言ってくれたんですよ」
岡田「へぇー」
滝田「で、そのままカンヌへ行って、まぁそこでやっぱいろいろ感じたのは、観客というのかな、評論家も含めて、映画に対してもの凄く厳しいんですよ」
岡田「うーん」
滝田「なぜこういう映画を作ったのかって、つまり自分が問われるっていうのかな。…あれ、俺そんなに深く考えてないことまで…」
岡田「(笑)」
滝田「いや、そういこと訊いてくるんですよ、ホントに」
岡田「はいはい」
滝田「分かりやすいことは答えられんだけど、彼らの感覚でいわれるその…それこそ悪意も含めて」
岡田「興味=ちょっと悪意も入って来たりとか」
滝田「悪意も含めて、」
岡田「好意、悪意入って来ますからね」
滝田「全部受け止めなきゃいけねえのかと思った時に、映画って怖いなと思ったのね」
岡田「うーん」
滝田「それはカンヌへ行ったときもそうですけど、忘れられないエピソードで、かの有名な、名前を言ってしまうとスパイク・リー」
岡田「はい」
滝田「のデビュー作も一緒だったんですよ。で、たまたま知り合いになってたんで、彼の映画を観に行ったら、彼が自分の劇場の前の海岸で座り込んで頭抱えてて、あれっどうしたんだ?って話しかけたら、」
岡田「スパイク・リー監督が頭抱えてたんですか?」
滝田「抱えてんの」
岡田「はい」
滝田「オレは自分の映画が怖くて観れない。つまり観客の反応が怖くてだと思うんだけど」
岡田「はい」
滝田「それを見た時に、僕(上映が)次の日だったの(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「怖くなっちゃって」
岡田「はい」
滝田「うわぁー…これはどうしよう、欠席したいと思ったんだけど、彼ですらそうだから」
岡田「はい」
滝田「で、まぁ幸い、上映して、上手くいった…上手くいったっていうかあの…スタンディングオベーションで真っ白のスポットライト浴びてボ~っとしてたら大島 渚さんが後ろの席にいて、『立ちなさいっ!手を振りなさいっ!』なんて言われて
」
岡田「(笑)」
滝田「なんにも分かんないうちにやってたけど。いや、こうじゃないんだ映画って怖いんだって、とにかく映画の怖さを覚えたことが自分にとってとっても大事でしたね」
岡田「うーん」
滝田「ちゃんと向き合えと。映画と。」
岡田「怖さを知る」
滝田「怖さ。怖いですよ」
岡田「大事なことだと思いますけど」
滝田「ええ。向こうから見ると、たかだか日本映画。僕らから見るとアウエーですよ」
岡田「そうですよね」
滝田「アウエー行って、やっぱり自分の国に対する映画愛って凄いですからね。あの人たち。」
岡田「はい」
滝田「もう、フランス映画だったらグワーッだし。自国の映画しか拍手しないし」
岡田「うん」
滝田「他の映画全部ブーイングとかね。そういう一面もあるんで。それと自分の言葉を持てるか持てないかっていう怖さ」
岡田「うーん。その怖さを持ちながら、撮り続けてる、戦い続けてるものってなんですか?」
滝田「…」
岡田「なんで撮り続けられるんですか?その怖さというか、映画というものが、自分をさらけ出してしまう怖さっていうのもあるんだと思いますけど」
滝田「はい、…だって、映画しか撮れないもん」
岡田「(笑)、それ、僕何回か聞いたことありますけど。カッコイイですね、やっぱりなんか…」
滝田「(レイモンド)チャンドラー風に言うと、『歌も踊りもできないからさ、』っていうのがあるよね(^^)」
岡田「
アッハハハハ」
滝田「なんで探偵やってんだ?って(笑)」
* * *
岡田「武勇伝というか…戦ってきたっていうのが(笑)」
滝田「いや、そんなことはないんですけどね、」
岡田「ご自身で武勇伝っていうのは、ヤダと思いますし、語るのもイヤだとは思いますけど(笑)」
滝田「(笑)」
岡田「なんの時でしたっけ?あの…『僕らはみんな生きている』(93年公開)とかの話を…」
滝田「あー、はいはい」
岡田「ちょっと聞いたことがあった時に、」
滝田「はい」
岡田「タイでしたっけ?」
滝田「タイでロケしてたんですね」
岡田「で、みんな帰っちゃってみたいなこととかも…」
滝田「ええ、帰ろう、みたいな。要するになんかね…僕らは、カモネギだったんですけど」
岡田「はい」
滝田「向こうのコーディネーター、すごく力のある人とやってて、ずーっと準備してて、ある時にやっぱり、お金を巡る…」
岡田「戦いになるわけですね」
滝田「うん。お金を巡ることと、そのやり方も含めてなんだけど、いつの間にか制作費半分以上なくなっちゃって」
岡田「はい」
滝田「これは一体どうなってんだ !? って、周りの向こうの人、会うたんびに服が変わるし、ロレックスしてくるし」
岡田「(笑)」
滝田「スゴイんだよ」
岡田「どこで金使ってんだっ !? みたいなことですよね」
滝田「全然進まないの」
岡田「ま、騙されたというか」
滝田「うん。それで、変えたの。コーディネーターを」
岡田「はい」
滝田「そうするとそこに対する攻撃が始まって、制作部なんかは脅かされて、お前ら帰さねえぞって言って帰さないみたいなことがあったんだけど、」
岡田「(笑)」
滝田「もういいや、行け行けってやってたんだけど、やっぱりそのお金がストップすると、向こうの人たちは週給で払ってるんで」
岡田「はい、回らなくなるんですよね」
滝田「ストライキなわけですよ。それで日本のスタッフの一部も、これは止めたほうがいいと。」
岡田「うん」
滝田「自分が楽になるから」
岡田「はい」
滝田「そういう人もたくさんいて、不穏な感じになってきたんで、これはダメだと…みなさんのパスポートを私の部屋にお預かりさせていただくのがいいんではないか、みたいな人とか(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「酒飲んで冗談で…犬神家の人々みたいに、チャオプラヤー川で逆さまになってる人いるかなー?みたいな、」
岡田「(笑)」
滝田「冗談ですよ(^^) まぁ、そんな状況だったんだけど、揉めれば揉めるほど、修羅場になるほど、なんか映画に対してピュアになっていったから」
岡田「うーん」
滝田「だって俺は撮りゃあいいんだ。あとは…自分の頭ン中にはお金とかスケジュールとかそんなものはもう全部飛んじゃってるんで、とにかく全部撮り切るし、主役の4人は帰しません(^^)」
岡田「(笑)」
滝田「絶対帰しませんって(笑)」
岡田「すごいですね、日本からも帰って来いみたいなのはなかったんでしたっけ?」
滝田「いや、もう行くも地獄、帰りも地獄なんで。帰ったら映画撮れないんでパンクするの分かってたんで、僕は正しいと思ってたんですよ」
岡田「はい。日本でも本部っていうか、日本でもどうなってんだ、みたいな感じになってて(笑)」
滝田「それはありますけど。でも向こうでやめたら、それまでのすべてがゼロになるんですよ」
岡田「はい」
滝田「で、撮ったら、借金になるかも分かんないけど、その…当たりゃ元が取れんじゃん。」
岡田「うーん…」
滝田「ということじゃないですか」
岡田「(笑)フッ…」
滝田「それと作品が残るっていうことですよね、まず」
岡田「いや…軽くおっしゃいますけど…その時、真田(広之)さんいて、」
滝田「ええ」
岡田「あと…山崎 努さんいて(笑)」
滝田「(岸部)一徳さんとか」
岡田「一徳さんいて…」
滝田「や、でも皆さんはもうやりたいっておっしゃってるわけだから」
岡田「スタッフはもう、その…ダメだろう、みたいな…」
滝田「はい」
岡田「充満して、日本からもちょっとお金なくなったってどういうことだよ、みたいな。帰って来い!みたいな感じになってる時に、撮るぞぉーっ !! ォラァーッ !!! って言って(笑)やられてたっていうのは、」
滝田「撮んなきゃ自分がもう潰される…もうダメになるって思ってますからね」
岡田「うーん…」
滝田「だって、その…お金のことじゃないけど、ここまでやっといてっていうことになるし、」
岡田「はい」
滝田「やっぱそん時は…よく言うけど、箱の中に腐ったリンゴとかミカンが1個入ってると、どんどんどんどんそのまま…」
岡田「周りも腐っていく…」
滝田「腐っていっちゃうよ、みたいなことだったら、もう箱を変えてしまえ!そんなものはもう。それから、その枠の中で…人間的なですよ、やり直すとか。もう根本的なことでやんないと、逃げないで僕がちゃんとやり切るっていう宣言をして、ついて来る人でやらなきゃいけないとか」
岡田「うーん…でも、軽く言いますけどその時の決断とか、その時のこう…なんだろう、状況とかって…」
滝田「あ、だから決断じゃないんですよ。映画を撮るためにピュアになれる。俺は撮るだけだ、っていうふうに割り切ったわけだから」
岡田「言い方変えるとやっぱり映画に命懸けてるってことですよね?」
滝田「まぁ命という…はい、そうですよね」
岡田「そういうこう…命懸けて映画を撮ってこられるっていう…」
滝田「や、懸けないと、自分の存在がなくなっちゃうんですよ。つまりその危機感…ずーっとそうだったから」
岡田「うーん」
滝田「とりあえず、終わる。」
岡田「(笑)」
滝田「撮り終える。簡単なことだろうと」
岡田「はい」
滝田「撮ればいいんだから。面白いものを。でもだから、いいもの撮れたと思いますよ。俳優部さんも皆、それはそれで乗ってくれてるし、」
岡田「うん」
滝田「切らないわけだから…感情も切らないで」
岡田「うーん。なんか、現場がぐちゃぐちゃとか、大変なことがあると、面白いんだよ、って…」
滝田「面白いですね」
岡田「おっしゃったことがあって。なんか予定通りに行ってると面白くないんだよね、って」
滝田「ええ(笑)」
岡田「現場でなんかいろいろあったり、ごちゃごちゃってあったほうが、面白かったり、いいもん出来たりするんだよって(笑)」
滝田「あの…本当はスムーズに映画なんていったほうがいいんですよ、皆が気持ち良く。いいけども、何かが起きるっていうことは…あの、負の意味でごちゃごちゃしたら困るんだけど、なんか、…いいスタッフっていうのは、いい人ってみんな個性あるんですよね」
岡田「はい」
滝田「だから、自分はこうやりたいああやりたい、ああでもないこうでもない、それが感情論にすり替わってぐちゃぐちゃになって行くんだけど、やっぱりそういういいスタッフを…感情とかをコントロールするのは監督の仕事だから、」
岡田「うん」
滝田「もうどんどん揉めてくれ。映画のために揉めてくれですよね」
岡田「うん」
滝田「個人的なことで揉めないでください(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「女性のことで揉めないでくださいっていうのはあるけど(笑)」
岡田「はい(^^)」
* * *
岡田「(天地明察は)人との繋がりであったりとか、いろんな挫折を繰り返しながらも、人に支えられ、」
滝田「はい」
岡田「進んで行き、事を成して行くっていう男性のお話だと思うんですけども」
滝田「はい」
岡田「でも、絵にしたときに、とても…数学、天文学…時代劇だけど天文に通じる話で、こう…難しいなって思われたりはしなかったですか?」
滝田「思いましたよ」
岡田「(笑)、まぁその…」
滝田「天文わかんないし、数学わかんないし…囲碁わかんない」
岡田「はい…絵にしたときに、どうなるんだろうっていうか、怖いなっていうのはなかったんですか?その、なんだろう…『壬生義士伝』とかもやられて、あれは動での…」
滝田「人の動きですからね」
岡田「人の動きも含め、感情も含めてのお話で時代物だったら、こう…アレですけど。今回はそんなに戦わない…戦い方の違う、未知なるものに対しての戦いですけど、その…研究してるシーンとかで、動きがないから、」
滝田「そうですね。でも…」
岡田「やっぱ映画ってちょっと感情の動きだったり、人の動きだったりっていうものを撮りたいところを、ずーっと研究してる…しかも何年も」
滝田「うん」
岡田「観測してるだけ(笑)研究してるだけってなんか…」
滝田「いや、そこが実は一番、撮ってて退屈だったとこっていうか(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「説明なんですよね」
岡田「はい。説明になっちゃうんですよね」
滝田「結果的には説明だけなんで、説明はお客さんも喜ばないだろうと。」
岡田「うん」
滝田「でもそれ…ま、簡単に説明だけをしてしまうことにして、そのあとの感情の芝居をちゃんと作れば、それは単なる通過点で、お客の頭にさえ何をしてるかが入れば良い。っていうことだけやればいいわけだから、あんまり深入りすると、とんでもないマニア映画になっちゃう…マニアックなものになっちゃうんで、そこは敢えてサラリとというか、全部やった上でですよ、全部調べてやった上で…」
岡田「僕らめっちゃめちゃ勉強会みたいなのやって(笑)」
滝田「(笑)」
岡田「これは何なんだ。これは何なんだ…暦の話なんで大統暦、宣明暦とか、いろいろ…象限儀とか、なんだこれは?みたいな。僕、スタッフにこれ何ですか?って言ったら、3日掛かりますけどいいですか?って言われて、じゃあ…うーん、かいつまんでお願いしますって言うぐらいの(笑)、それでも何時間も聞くぐらいの、膨大なことをやられている…原作でも、本人たちもやられているから、僕らは全部知った上で、削って行きながらいいとこを出して行かなきゃいけないっていう…」
滝田「だからああいう場面ってお客が、あ、なんかやってるっていうのが分かればいいと思うんですよ。何に向かって何をやってるんだ、さえ分かっていればいいと思うんで。細かいとこいっぱい撮ったけども、それは使えませんよね、映画では殆ど。」
岡田「(笑)フハハハッ」
滝田「(笑)、らしいものがあればいいと。」
岡田「うん」
滝田「ええ」
岡田「監督が、この『天地明察』で、もっとも伝えたかったことって何ですか?」
滝田「うん、これは…ね、いつも、いつも訊かれてることだけど」
岡田「(笑)ハハハハハッ…いつもね、最近…」
滝田「やっぱ時代性ですね。あの時代にあって、」
岡田「はい」
滝田「あの安井算哲の生き方があったことは、今の時代の中でも出来るはずだ。…まさにあの時代…江戸初期ですね、天下泰平といわれた時代は今ともの凄く似てるんだっていうことだと思いますね」
岡田「うーん」
滝田「400年前の話ではなくて、今も真剣勝負をすれば出来ることはたくさんあるのではないか、という希望を持ってほしいということです」
岡田「うーん」
* * *
岡田「J-WAVE GROWING REED。 今夜は映画監督の滝田洋二郎さんにお話を伺ってきました。ということで、あの、滝田さん…素敵な滝田さん、監督ですけども。なんかね、ホントにこう、いろいろ乗り越えて来られた方…なんですよね。そして映画を愛し、映画に命を懸けて、監督をされている…方なんですけど、ホントにご一緒する機会があって、幸せな時間を過ごせましたし、なんか、あの…こう…うーん、あの世代って言ったらおかしいですけど、すごくいろんなことを学ばしてもらえる現場だったなっていうのをすごく…思い出します。あの…何でもいいよっていう器のある、器のある…?何でもは良くないんだけど(笑)、何でも来ても、どうとでも出来るよっていう器のある、その…世代というか。すごいカッコイイなと思いますし、うーん…そんな滝田洋二郎監督。そして、僕が参加しました『天地明察』。ぜひ…そんなね、男たち…そんな人たちが、いっぱい作った作品ですので、ぜひ、劇場で、どんなもんか、観ていただけたら、うれしいなぁと思います。9月15日公開です。ぜひ劇場で観てください。お願いします。」
~Played songs~
『STAR CHASERS』 4 HERO
『MIDNIGHT AT THE OASIS』 BRAND NEW HEAVIES
『THE HARDEST PART』 COLDPLAY
『FIGHT THE POWER』 PUBLIC ENEMY
『荒野を行く』 奥田民生
『WHEN YOU WISH UPON A STAR』 BILLY JOEL
『STAR』 PRIMAL SCREAM
Guest 滝田洋二郎 (監督/脚本)
岡田「こんばんは、岡田准一です。今夜も始まりました、GROWING REED。この番組では、毎週ひとつのテーマの専門家をお呼びして徹底的に質問。番組の終わりには、考える葦として僕も皆さんと一緒に成長したいと思っています。
今夜のゲストは、映画監督の滝田洋二郎(たきたようじろう)さんです。滝田監督は、1986年に公開された映画『コミック雑誌なんかいらない ! 』を監督。『病院へ行こう』、『陰陽師』、『壬生義士伝』など、数々の作品を世に送り出し、2008年公開『おくりびと』で第81回米国アカデミー賞外国語映画賞を獲得。日本映画界を代表する映画監督のお一人です。そしてこの秋に公開となります、9月15日に公開です。映画『天地明察』では僕もご一緒させていただいています。ほんとにあの、滝田監督というのはもうエネルギッシュで、いろいろこう…経験して来られた方という感じがします。そういう方ですので、えー、今日はですね、滝田監督のことを存分に聞いて、どういう人が『天地明察』を作っているのかっていうのをお聞きできればいいなぁと、すごく思っています。今夜はですね、滝田監督の映画への情熱などを伺っていきたいと思います。J-WAVE GROWING REED 新しい一週間最初の60分、ぜひ一緒におつきあいください。」
* * *
岡田「あの、僕がですね、」
滝田「はい」
岡田「監督とこう…お会いして思ったのは、もの凄いエネルギッシュな…監督っていうイメージが、ものすごいあるんですよ」
滝田「そうですか?」
岡田「もう現場でだって、疲れなんか知らない、みたいな…」
滝田「(笑)」
岡田「(笑)、感じじゃないですか」
滝田「現場やってると、ね。幸せだから。」
岡田「そうなんですよ、」
滝田「疲れてる場合じゃないだろうって感じですね」
岡田「ずっと、本当に幸せだぁっていう感じで現場でいらっしゃって。もうあの、楽しくてしょうがないと。」
滝田「楽しいですね」
岡田「感じじゃないですか(^^)」
滝田「はい」
岡田「でなんか、あの…なんていうのかな、もうなんか、僕が言うのも失礼かもしれないですけど、面白いおもちゃをもらって、」
滝田「あー」
岡田「遊んでる…子どものような、」
滝田「はいはい」
岡田「感じがする、瞬間が何回もあったんですよ、現場で」
滝田「ああ、そうですか」
岡田「そうです。だからそのエネルギーというか、」
滝田「うん」
岡田「その持っているものっていうのが…なんて素敵な人なんだっていうのが、現場の時の…」
滝田「へぇー」
岡田「イメージなんですけども」
滝田「でもそれまでに、けっこう悩んだり苦しんだりしてるから」
岡田「それはあの、撮影中っていうことで?」
滝田「じゃなくて」
岡田「それとも今までずーっとこう…監督をやられてきてっていうことですか?」
滝田「うん、それもそうだし、各作品の(撮影)前は…この映画ってどこへ行くんだろう?っていうのはなかなか見つけづらいっていうか…」
岡田「『天地明察』のときは、撮影前は相当悩まれたんですか?」
滝田「うん、やっぱりこう…要素が多いじゃないですか。描かなければいけない要素が」
岡田「はい」
滝田「多いんだけど、分かりやすくシンプルにしながら、やっぱりどうやってこう…緩急つけながらお客さんに伝わって行くのかなーみたいな全体感と、現場は具体的にどうやって行くかっていうことなんだけど、その…正解がないじゃないですか」
岡田「…この仕事というか」
滝田「仕事。映画を作ること」
岡田「映画を作る…」
滝田「作り方も含めて」
岡田「はい」
滝田「だからこそ自分の作り方みたいなものに拘ったり、何を撮るかっていうことに拘る」
岡田「うん」
滝田「シンプルにそこだけを拘れば、あとは抜け切れば楽しくなるっていうか。それを見つけるために現場をやってるみたいな感じですかね」
岡田「うーん。最初にお会いした時に、『壊して行きましょう』と」
滝田「はいはい。そうですね」
岡田「言っていただいたのを覚えてますか?」
滝田「覚えてますよ」
岡田「最初に、しょっぱなに会った時に、いろいろありますけど、まず壊して、現場でもホントに…なんだろ、生まれてくるもの…?っていうのを撮っていきましょうっていうのが、すごく印象的だったんですけど」
滝田「うん。どうしてもシナリオ通りにやろうとか、もう既に何かにこう…呪縛されてるみたいなとこってあると思うんですよね、映画作るときに」
岡田「はい」
滝田「じゃなくて、映画は一人で作ってるわけじゃないから、僕はこう思うっていう形がシナリオに投影されているけれど、でも衣装つけて現場へ行って…あるいはその前後のシーンを撮っていると、やっぱりその通りではないものが生まれると思うんですよね」
岡田「うーん」
滝田「あるいはその人の考えてることであるとか、演技のあり方とか、なんでもいいんだけど、あるいはスタッフもそうだけど、そういう会話をし尽くして現場で何が生まれるか、あるいはロケーションならロケーションの環境もあるだろうし、その中で何かこう…あ、これだ ! って生まれた瞬間を撮り切りたい、っていうことですけど」
岡田「うーん。なんか壊して楽しもうっていう感じが、最初にぅわーっ ! ていう感じがして、」
滝田「はい」
岡田「壊そうぜ、楽しもうぜ、って」
滝田「はいはい、」
岡田「言える、監督世代のパワーってのが…。世代で区切るとちょっとアレかもしれないですけど。監督世代で、壊して楽しもうよって言われると思ってなかったんですよ、僕。」
滝田「あー。なるほど」
岡田「現場入るまで」
滝田「はい」
岡田「やっぱこう…イメージですけど、アカデミー賞監督で、」
滝田「ええ」
岡田「『おくりびと』でアカデミー賞をとられて、初めて会う時どういう監督なんだろうなー
って」滝田「(笑)」
岡田「思うわけじゃないですか。そこでもう壊しちゃって楽しもうよぉ、みたいな感じで、とにかく楽しみましょうみたいな」
滝田「うんうん」
岡田「壊して行きましょうねぇ、みたいな感じで言っていただいたのが、」
滝田「はい」
岡田「なんて懐の深い…この世代だから言えることなのかなっていうのもすごく…なんでも受け止めるよっていう」
滝田「あ、それはあるかもしれないですね。やっぱり僕は…たぶんもうベテランの域になってるといわれているけれど、」
岡田「はい」
滝田「やっぱり若い頃からいろんな映画を撮ってきて、…映画の最終着地点ってどこだ?っていうふうに考えたときに、シナリオは一番大切だと思うんだけど、」
岡田「はい」
滝田「でもそれだけではないですよね。その現場でやることの意味っていうのは、このシナリオのこのセリフをどういうふうに言うか、あるいは言わないのか、みたいなものをどう判断していくかっていうことじゃないですか」
岡田「はい」
滝田「で、それは僕が考えることと岡田さんが考えること、あるいはスタッフが考えること、みんな違ってたほうが面白いっていうか」
岡田「うん」
滝田「自分が思った通りにならないほうが面白い…(^^)」
岡田「(笑)フフ」
滝田「要するに欲張りなんだよね。思ってる以上に面白くなってほしい!っていう…」
岡田「そこに辿り着くのって、監督では難しくないですか?例えば、もうオレの言う通りに、イメージ通りにやれよっ!みたいなこととか…」
滝田「あ、でもそれも共有してるつもりなんです」
岡田「それもありつつ…」
滝田「違えば違う…だからいっぱいやってもらっておいて、あ、やっぱり違う、やっぱりこの通り、みたいなこともあるから…」
岡田「いっぱい、そう…基本的にそうだと思うんですけど、その中でも、いろんな意見が出てきて、いろいろやったほうが面白いって…、なかなか今こう…そう思えない時代なのかなっていうか、その…いろいろ言われることもイヤになってくるというか
年を重ねてると余計イヤになってくるっつってもヘンですけど」滝田「あー。うん。でも僕より凄いヤツっていっぱいいるわけだから」
岡田「んー」
滝田「あの…いただきます。それ、いただきますってつまり一つのことに…僕の考えてることよりもっとデカくなればそれで良し、と思ってるんで。」
岡田「うーん」
滝田「うん」
岡田「それは監督の生き様ですかね?生きてきた…」
滝田「まぁきっとそうでしょうね(^^)」
岡田「(笑)」
滝田「先が見えないから。ホントに」
岡田「監督はだって初めは…あの…81年が初めですか?監督としては」
滝田「あ、そうですね」
岡田「僕 1歳です」
滝田「1歳」
岡田「すいません(笑)ペーペーっていったらヘンですけど、あの…(僕が)1歳の時から監督をやられてる…」
滝田「1歳のときには絶対に観れない映画、撮ってました」
岡田「そうですよね?」
滝田「はい」
岡田「『痴漢女教師』ですよね」
滝田「そうです、はい」
* * *
岡田「これは何系映画っていう…」
滝田「いわゆる成人映画」
岡田「成人映画ですよね?」
滝田「はい」
岡田「成人映画とかこう…いわゆるピンク映画っていわれる…」
滝田「ピンク映画…日活ロマンポルノ含めて、」
岡田「出身っていうんですかね?」
滝田「出身ですね」
岡田「その頃、大変…大変だったっていうか、思い出っていうのって…?」
滝田「うーん、あの…『ピンク』っていわれてたから、つまり一般映画とはまったく区別差別されていて、」
岡田「うん」
滝田「例えば、作って上映しても日本映画界のリストには入ってないという」
岡田「うーん」
滝田「要するにメジャー会社のリストしかなくて、その頃…ロマンポルノは別ですけど、ピンク映画っていうのは誰が何を何本作ったかっていうのは、マニアの間では…当然その専門誌の間では分かるけれど」
岡田「うん」
滝田「日本映画の中では認められてないから。で、お金もないし時間もないから、なんかボロ雑巾のように助監督を…」
岡田「
」滝田「(^^)やってたんだけど。でもね、みんな熱いんですよ」
岡田「うーん」
滝田「で、ピンク映画の始まりというのが、かつて大手でやってた人たちがだんだん流れて来て、テレビに行かないでフィルムでやりたいっていう人たちとかがいたんだけど、相当屈折した人たちが多くて、あるいは若い…学生運動世代の人たちもたくさんいたのね」
岡田「はい」
滝田「あるいは映画好きの、映画青年みたいな者まで。だからすごくごっちゃごちゃで熱くて。で、映画を知らない僕なんてのは最初ボロカスに言われて、人格なんかありもしませんみたいな」
岡田「(笑)、すごい時代ですよね?時代って言ったらヘンですけど、」
滝田「時代です時代です、それは」
岡田「ここ10年とかでも、大分変ったっていわれますけど、」
滝田「全然変わってるでしょうね」
岡田「もっと前って、もっとすごい時代じゃないですか」
滝田「はいはい」
岡田「ここ10年でもその…なんだろう、助監さんに怒るとかっていうことをしなくなった時代ですけど」
滝田「あー」
岡田「その前からっていったらもう、ホントに凄い…」
滝田「怒られるんじゃなくて、何をやってもボロカスな…
」岡田「(笑)」
滝田「そいで監督との距離がありすぎて…ありすぎるって監督になれるチャンスが少ないっていう…」
岡田「はい」
滝田「だからやってて、(監督に)なれんのかどうか分かんないけど、なんかこのごっちゃごちゃの熱気の中でやってると、やっぱり面白いんですよね」
岡田「うーん」
滝田「で終わったら酒飲んですぐ…仕上げもしないで次の現場へもうたらい回しにされるんだけど、」
岡田「はい」
滝田「でも今思うと、フィルムにまみれ続ける時間…短い期間でもいいんだけど、何年かでもいいんだけど、何にも分からない時って…もうそういう時間ってのは後々すごく大切になってくるって、つまり体で全部覚えてしまう」
岡田「うーん。まみれる時間」
滝田「まみれる時間ですね、ええ。」
岡田「おー」
滝田「それが濃ければ濃いほど、ボロクソであるほど面白い(^^)」
岡田「(笑)、よくなんかその…ボロクソであるほど面白いとかって、」
滝田「今考えるとだからね、これ」
岡田「(笑)、当時は大変…」
滝田「当時は、辞めたくて…辞めたかったんだけど、」
岡田「そうなんですか?」
滝田「辞めたいっていうかね、」
岡田「ということはキツかったっていうことですよね?」
滝田「うん。しんどいのと、いろんなことがあって…あるじゃないですか、お金もないわ、プライベートな時間はないわ」
岡田「はい」
滝田「だけど、このまま辞めンのカッコ悪いしなぁーとかね。つまり自分の親も…僕は富山出身なんだけど、」
岡田「はい」
滝田「周りの人間もみーんな知ってるわけだよね、僕がピンク映画やってるってことを。要するに笑われてるわけですよ、ある意味ね」
岡田「うーん…」
滝田「そんな仕事してる、という。でも人間って、なんだろう、好意と悪意って同居してるじゃないですか」
岡田「はい」
滝田「だから上手く行ってるときは好意なんだけど、常に悪意が隣にあるっていうか」
岡田「うん…はい」
滝田「だからその…悪意みたいなものも…悪意というのかな、人間の素直な感情だとは思うんだけど」
岡田「はい」
滝田「だからこのまま辞めたらカッコ悪いなとか、とりあえず1本撮るまで、絶対やってやろう」
岡田「監督として1本やるまで」
滝田「ええ。いびられた奴…殴って終わっても面白くもなんともない…それまでの話なんで」
岡田「うーん」
滝田「で、1本。たまたまチャンスがあって、ピンチヒッターみたいなことで撮ったら、これがこの…監督という体験が、自分に…なんか新しいものをもたらしたっていうか、この瞬間というかね」
岡田「何が違ったんですか?」
滝田「つまり全然ね、映画に対する体感温度っていうものが違うんですよね」
岡田「うーん」
滝田「で、5日間ぐらい撮ってるんだけど、ほとんど一睡もしてない。毎日1時間2時間しか寝てなくてやってんだけど」
岡田「はい」
滝田「みんなもういい加減にしてくれってもうヘロヘロなんだけど、自分だけが冴えてくるんですよ。違うゾーンに入ってくるみたい。自分で言っちゃいけないけど」
岡田「はい」
滝田「なんかそういう悦びを覚えちゃったから…あの、分かりやすい性格なんで、これはもう…やめらんないよね、やっぱり。っていう感じかな(^^)」
岡田「(笑)、何の魅力があったんですか?監督っていうか、その…キツいことも乗り越えて、助監さん…スーパー助監督だったんですよね?」
滝田「全然、ですね。ダメなほうのスーパーかもしれないけど」
岡田「ホントですか(笑)、スゴイできる助監督だったっていう…」
滝田「いやいや、それね、」
岡田「噂を聞いたんですけど」
滝田「できるっていう定義みたいなことって難しいんだけど」
岡田「はい」
滝田「キチッと監督の言う通り、制作者の言う通り仕切るっていうのが優秀な助監督。って言われてたんだけど」
岡田「はい」
滝田「僕の場合はそうじゃなくて、多分…そんなことはどうでもよくて、どっちにしろ映画なんて終わるんですよ。監督がどんなに偉そうなことを言ったって、」
岡田「(笑)」
滝田「金 無くなって、時間 経ちゃあ、終わるんですよ」
岡田「はい、はい
」滝田「それよりは、大事なときに何が言えるかとか。つまり監督もみんなも悩み出したときに、これはこっちのほうが絶対面白いんじゃないですか?とか」
岡田「うん」
滝田「方向…ある確信みたいなものをちゃんと自分で持って言えるかっていうことのほうが、僕は優秀だと思うし、」
岡田「うん」
滝田「僕の助監督もそういう人を求めたいと思ってるけど」
* * *
岡田「このリスナーとか、若い世代というか、」
滝田「はい」
岡田「多分ちょうど助監督(をやられていた頃の)…世代の人に見られている…責任を持つ一歩手前というか、…すべての責任を持つ(監督の)一歩手前みたいな方も聴かれているのも多いと思いますけど」
滝田「はい」
岡田「大事なものを選ぶ…チョイスするというか、楽しく楽しく…って段取りを早くちゃんとしなきゃ、っていうほうが良いとされる助監督の中で、大事なことをパッて言える、」
滝田「ええ」
岡田「これは面白いですよ!って言って、それを忘れなかったものってなんでですか?」
滝田「それは無責任だから言えるってこともあるんだけど」
岡田「(笑)」
滝田「あの、それが助手と監督の違いだと思うんですけども」
岡田「うん」
滝田「でも監督になった時って、さっき言った絶対的な体感温度が違うんですよ、映画に対する」
岡田「うん」
滝田「やっぱそういうもの…昔からよく…野球も一緒だと思うけど、名選手名監督にならずっていうのと、映画では、名助監督名監督にならずっていうのがなぜか…」
岡田「はい」
滝田「あったんですよ。そういえばそうだなー、俺 グズでよかったなぁと、思ってるけど(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「やっぱり優秀な人はたくさんいるんですよ」
岡田「そうですよね」
滝田「それは社会的にもね、」
岡田「ずっと助監督の方とか…(いらっしゃる)」
滝田「映画作るってそういうことじゃないだろうっていうか、やっぱりこう…一番大事なことで悩んで、決断しようとしてるときにそれを流そうとする人たちが殆どなんだけど、やっぱそんな中でこれをやんなきゃダメなんだ!っていう…それがでもホントの監督を守るための信頼関係だし、助監督の仕事だと思ってたから」
岡田「うーん。それで、ずっとやってこられて、きっかけとなったものってやっぱり『コミック雑誌なんかいらない!』ですかね?」
滝田「そうですね、『コミック雑誌なんかいらない!』っていう映画は僕にとってはとても大きな転機になりましたけど」
岡田「はい」
滝田「内田裕也さんから電話をいただいて、あるプロダクションが作った映画がテレビに売れたんで、3千万円で撮っていいよと。で、内田裕也さんと勝手に撮っててみたいな企画なのね、」
岡田「はい」
滝田「関わりたくない、みたいな(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「だからそれを作った時に…それまでは監督プロデュースなんで、自分で赤字を補填しなければならなかったんだけど」
岡田「はい」
滝田「今度は会社持ちなんで、シナリオ作ってそのまま好きに撮ってたんですね」
岡田「うーん」
滝田「そしたらいつまで経っても終わんなくて、大赤字になったけど、やっぱり映画っていつか終わるんですよ」
岡田「うん」
滝田「ええ。で、とても熱くて、自分で好きな映画だったんですけどね」
岡田「はい」
滝田「これが売れない。いろんな人が出てたり、ちょっと…社会的にダメだと」
岡田「(笑)」
滝田「でも、たまたま日本で試写をやってた時に、ニューヨークの近代美術館の人が映画祭をやるんで、これ(コミック雑誌なんかいらない!)をニューヨークに呼ぶって言ってくれたんですよね」
岡田「はい」
滝田「で、そのままニューヨーク…初めての海外旅行で。ニューヨーク行って、やってたら、なんとsold out 続いて、追加上映になって、たまたまニューヨーク・タイムズの人が批評してくれたのが良かったのもあるけど、今度はそれを見てたカンヌの人が、カンヌ映画祭に出すって言ってくれたんですよ」
岡田「へぇー」
滝田「で、そのままカンヌへ行って、まぁそこでやっぱいろいろ感じたのは、観客というのかな、評論家も含めて、映画に対してもの凄く厳しいんですよ」
岡田「うーん」
滝田「なぜこういう映画を作ったのかって、つまり自分が問われるっていうのかな。…あれ、俺そんなに深く考えてないことまで…」
岡田「(笑)」
滝田「いや、そういこと訊いてくるんですよ、ホントに」
岡田「はいはい」
滝田「分かりやすいことは答えられんだけど、彼らの感覚でいわれるその…それこそ悪意も含めて」
岡田「興味=ちょっと悪意も入って来たりとか」
滝田「悪意も含めて、」
岡田「好意、悪意入って来ますからね」
滝田「全部受け止めなきゃいけねえのかと思った時に、映画って怖いなと思ったのね」
岡田「うーん」
滝田「それはカンヌへ行ったときもそうですけど、忘れられないエピソードで、かの有名な、名前を言ってしまうとスパイク・リー」
岡田「はい」
滝田「のデビュー作も一緒だったんですよ。で、たまたま知り合いになってたんで、彼の映画を観に行ったら、彼が自分の劇場の前の海岸で座り込んで頭抱えてて、あれっどうしたんだ?って話しかけたら、」
岡田「スパイク・リー監督が頭抱えてたんですか?」
滝田「抱えてんの」
岡田「はい」
滝田「オレは自分の映画が怖くて観れない。つまり観客の反応が怖くてだと思うんだけど」
岡田「はい」
滝田「それを見た時に、僕(上映が)次の日だったの(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「怖くなっちゃって」
岡田「はい」
滝田「うわぁー…これはどうしよう、欠席したいと思ったんだけど、彼ですらそうだから」
岡田「はい」
滝田「で、まぁ幸い、上映して、上手くいった…上手くいったっていうかあの…スタンディングオベーションで真っ白のスポットライト浴びてボ~っとしてたら大島 渚さんが後ろの席にいて、『立ちなさいっ!手を振りなさいっ!』なんて言われて
」岡田「(笑)」
滝田「なんにも分かんないうちにやってたけど。いや、こうじゃないんだ映画って怖いんだって、とにかく映画の怖さを覚えたことが自分にとってとっても大事でしたね」
岡田「うーん」
滝田「ちゃんと向き合えと。映画と。」
岡田「怖さを知る」
滝田「怖さ。怖いですよ」
岡田「大事なことだと思いますけど」
滝田「ええ。向こうから見ると、たかだか日本映画。僕らから見るとアウエーですよ」
岡田「そうですよね」
滝田「アウエー行って、やっぱり自分の国に対する映画愛って凄いですからね。あの人たち。」
岡田「はい」
滝田「もう、フランス映画だったらグワーッだし。自国の映画しか拍手しないし」
岡田「うん」
滝田「他の映画全部ブーイングとかね。そういう一面もあるんで。それと自分の言葉を持てるか持てないかっていう怖さ」
岡田「うーん。その怖さを持ちながら、撮り続けてる、戦い続けてるものってなんですか?」
滝田「…」
岡田「なんで撮り続けられるんですか?その怖さというか、映画というものが、自分をさらけ出してしまう怖さっていうのもあるんだと思いますけど」
滝田「はい、…だって、映画しか撮れないもん」
岡田「(笑)、それ、僕何回か聞いたことありますけど。カッコイイですね、やっぱりなんか…」
滝田「(レイモンド)チャンドラー風に言うと、『歌も踊りもできないからさ、』っていうのがあるよね(^^)」
岡田「
アッハハハハ」滝田「なんで探偵やってんだ?って(笑)」
* * *
岡田「武勇伝というか…戦ってきたっていうのが(笑)」
滝田「いや、そんなことはないんですけどね、」
岡田「ご自身で武勇伝っていうのは、ヤダと思いますし、語るのもイヤだとは思いますけど(笑)」
滝田「(笑)」
岡田「なんの時でしたっけ?あの…『僕らはみんな生きている』(93年公開)とかの話を…」
滝田「あー、はいはい」
岡田「ちょっと聞いたことがあった時に、」
滝田「はい」
岡田「タイでしたっけ?」
滝田「タイでロケしてたんですね」
岡田「で、みんな帰っちゃってみたいなこととかも…」
滝田「ええ、帰ろう、みたいな。要するになんかね…僕らは、カモネギだったんですけど」
岡田「はい」
滝田「向こうのコーディネーター、すごく力のある人とやってて、ずーっと準備してて、ある時にやっぱり、お金を巡る…」
岡田「戦いになるわけですね」
滝田「うん。お金を巡ることと、そのやり方も含めてなんだけど、いつの間にか制作費半分以上なくなっちゃって」
岡田「はい」
滝田「これは一体どうなってんだ !? って、周りの向こうの人、会うたんびに服が変わるし、ロレックスしてくるし」
岡田「(笑)」
滝田「スゴイんだよ」
岡田「どこで金使ってんだっ !? みたいなことですよね」
滝田「全然進まないの」
岡田「ま、騙されたというか」
滝田「うん。それで、変えたの。コーディネーターを」
岡田「はい」
滝田「そうするとそこに対する攻撃が始まって、制作部なんかは脅かされて、お前ら帰さねえぞって言って帰さないみたいなことがあったんだけど、」
岡田「(笑)」
滝田「もういいや、行け行けってやってたんだけど、やっぱりそのお金がストップすると、向こうの人たちは週給で払ってるんで」
岡田「はい、回らなくなるんですよね」
滝田「ストライキなわけですよ。それで日本のスタッフの一部も、これは止めたほうがいいと。」
岡田「うん」
滝田「自分が楽になるから」
岡田「はい」
滝田「そういう人もたくさんいて、不穏な感じになってきたんで、これはダメだと…みなさんのパスポートを私の部屋にお預かりさせていただくのがいいんではないか、みたいな人とか(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「酒飲んで冗談で…犬神家の人々みたいに、チャオプラヤー川で逆さまになってる人いるかなー?みたいな、」
岡田「(笑)」
滝田「冗談ですよ(^^) まぁ、そんな状況だったんだけど、揉めれば揉めるほど、修羅場になるほど、なんか映画に対してピュアになっていったから」
岡田「うーん」
滝田「だって俺は撮りゃあいいんだ。あとは…自分の頭ン中にはお金とかスケジュールとかそんなものはもう全部飛んじゃってるんで、とにかく全部撮り切るし、主役の4人は帰しません(^^)」
岡田「(笑)」
滝田「絶対帰しませんって(笑)」
岡田「すごいですね、日本からも帰って来いみたいなのはなかったんでしたっけ?」
滝田「いや、もう行くも地獄、帰りも地獄なんで。帰ったら映画撮れないんでパンクするの分かってたんで、僕は正しいと思ってたんですよ」
岡田「はい。日本でも本部っていうか、日本でもどうなってんだ、みたいな感じになってて(笑)」
滝田「それはありますけど。でも向こうでやめたら、それまでのすべてがゼロになるんですよ」
岡田「はい」
滝田「で、撮ったら、借金になるかも分かんないけど、その…当たりゃ元が取れんじゃん。」
岡田「うーん…」
滝田「ということじゃないですか」
岡田「(笑)フッ…」
滝田「それと作品が残るっていうことですよね、まず」
岡田「いや…軽くおっしゃいますけど…その時、真田(広之)さんいて、」
滝田「ええ」
岡田「あと…山崎 努さんいて(笑)」
滝田「(岸部)一徳さんとか」
岡田「一徳さんいて…」
滝田「や、でも皆さんはもうやりたいっておっしゃってるわけだから」
岡田「スタッフはもう、その…ダメだろう、みたいな…」
滝田「はい」
岡田「充満して、日本からもちょっとお金なくなったってどういうことだよ、みたいな。帰って来い!みたいな感じになってる時に、撮るぞぉーっ !! ォラァーッ !!! って言って(笑)やられてたっていうのは、」
滝田「撮んなきゃ自分がもう潰される…もうダメになるって思ってますからね」
岡田「うーん…」
滝田「だって、その…お金のことじゃないけど、ここまでやっといてっていうことになるし、」
岡田「はい」
滝田「やっぱそん時は…よく言うけど、箱の中に腐ったリンゴとかミカンが1個入ってると、どんどんどんどんそのまま…」
岡田「周りも腐っていく…」
滝田「腐っていっちゃうよ、みたいなことだったら、もう箱を変えてしまえ!そんなものはもう。それから、その枠の中で…人間的なですよ、やり直すとか。もう根本的なことでやんないと、逃げないで僕がちゃんとやり切るっていう宣言をして、ついて来る人でやらなきゃいけないとか」
岡田「うーん…でも、軽く言いますけどその時の決断とか、その時のこう…なんだろう、状況とかって…」
滝田「あ、だから決断じゃないんですよ。映画を撮るためにピュアになれる。俺は撮るだけだ、っていうふうに割り切ったわけだから」
岡田「言い方変えるとやっぱり映画に命懸けてるってことですよね?」
滝田「まぁ命という…はい、そうですよね」
岡田「そういうこう…命懸けて映画を撮ってこられるっていう…」
滝田「や、懸けないと、自分の存在がなくなっちゃうんですよ。つまりその危機感…ずーっとそうだったから」
岡田「うーん」
滝田「とりあえず、終わる。」
岡田「(笑)」
滝田「撮り終える。簡単なことだろうと」
岡田「はい」
滝田「撮ればいいんだから。面白いものを。でもだから、いいもの撮れたと思いますよ。俳優部さんも皆、それはそれで乗ってくれてるし、」
岡田「うん」
滝田「切らないわけだから…感情も切らないで」
岡田「うーん。なんか、現場がぐちゃぐちゃとか、大変なことがあると、面白いんだよ、って…」
滝田「面白いですね」
岡田「おっしゃったことがあって。なんか予定通りに行ってると面白くないんだよね、って」
滝田「ええ(笑)」
岡田「現場でなんかいろいろあったり、ごちゃごちゃってあったほうが、面白かったり、いいもん出来たりするんだよって(笑)」
滝田「あの…本当はスムーズに映画なんていったほうがいいんですよ、皆が気持ち良く。いいけども、何かが起きるっていうことは…あの、負の意味でごちゃごちゃしたら困るんだけど、なんか、…いいスタッフっていうのは、いい人ってみんな個性あるんですよね」
岡田「はい」
滝田「だから、自分はこうやりたいああやりたい、ああでもないこうでもない、それが感情論にすり替わってぐちゃぐちゃになって行くんだけど、やっぱりそういういいスタッフを…感情とかをコントロールするのは監督の仕事だから、」
岡田「うん」
滝田「もうどんどん揉めてくれ。映画のために揉めてくれですよね」
岡田「うん」
滝田「個人的なことで揉めないでください(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「女性のことで揉めないでくださいっていうのはあるけど(笑)」
岡田「はい(^^)」
* * *
岡田「(天地明察は)人との繋がりであったりとか、いろんな挫折を繰り返しながらも、人に支えられ、」
滝田「はい」
岡田「進んで行き、事を成して行くっていう男性のお話だと思うんですけども」
滝田「はい」
岡田「でも、絵にしたときに、とても…数学、天文学…時代劇だけど天文に通じる話で、こう…難しいなって思われたりはしなかったですか?」
滝田「思いましたよ」
岡田「(笑)、まぁその…」
滝田「天文わかんないし、数学わかんないし…囲碁わかんない」
岡田「はい…絵にしたときに、どうなるんだろうっていうか、怖いなっていうのはなかったんですか?その、なんだろう…『壬生義士伝』とかもやられて、あれは動での…」
滝田「人の動きですからね」
岡田「人の動きも含め、感情も含めてのお話で時代物だったら、こう…アレですけど。今回はそんなに戦わない…戦い方の違う、未知なるものに対しての戦いですけど、その…研究してるシーンとかで、動きがないから、」
滝田「そうですね。でも…」
岡田「やっぱ映画ってちょっと感情の動きだったり、人の動きだったりっていうものを撮りたいところを、ずーっと研究してる…しかも何年も」
滝田「うん」
岡田「観測してるだけ(笑)研究してるだけってなんか…」
滝田「いや、そこが実は一番、撮ってて退屈だったとこっていうか(笑)」
岡田「(笑)」
滝田「説明なんですよね」
岡田「はい。説明になっちゃうんですよね」
滝田「結果的には説明だけなんで、説明はお客さんも喜ばないだろうと。」
岡田「うん」
滝田「でもそれ…ま、簡単に説明だけをしてしまうことにして、そのあとの感情の芝居をちゃんと作れば、それは単なる通過点で、お客の頭にさえ何をしてるかが入れば良い。っていうことだけやればいいわけだから、あんまり深入りすると、とんでもないマニア映画になっちゃう…マニアックなものになっちゃうんで、そこは敢えてサラリとというか、全部やった上でですよ、全部調べてやった上で…」
岡田「僕らめっちゃめちゃ勉強会みたいなのやって(笑)」
滝田「(笑)」
岡田「これは何なんだ。これは何なんだ…暦の話なんで大統暦、宣明暦とか、いろいろ…象限儀とか、なんだこれは?みたいな。僕、スタッフにこれ何ですか?って言ったら、3日掛かりますけどいいですか?って言われて、じゃあ…うーん、かいつまんでお願いしますって言うぐらいの(笑)、それでも何時間も聞くぐらいの、膨大なことをやられている…原作でも、本人たちもやられているから、僕らは全部知った上で、削って行きながらいいとこを出して行かなきゃいけないっていう…」
滝田「だからああいう場面ってお客が、あ、なんかやってるっていうのが分かればいいと思うんですよ。何に向かって何をやってるんだ、さえ分かっていればいいと思うんで。細かいとこいっぱい撮ったけども、それは使えませんよね、映画では殆ど。」
岡田「(笑)フハハハッ」
滝田「(笑)、らしいものがあればいいと。」
岡田「うん」
滝田「ええ」
岡田「監督が、この『天地明察』で、もっとも伝えたかったことって何ですか?」
滝田「うん、これは…ね、いつも、いつも訊かれてることだけど」
岡田「(笑)ハハハハハッ…いつもね、最近…」
滝田「やっぱ時代性ですね。あの時代にあって、」
岡田「はい」
滝田「あの安井算哲の生き方があったことは、今の時代の中でも出来るはずだ。…まさにあの時代…江戸初期ですね、天下泰平といわれた時代は今ともの凄く似てるんだっていうことだと思いますね」
岡田「うーん」
滝田「400年前の話ではなくて、今も真剣勝負をすれば出来ることはたくさんあるのではないか、という希望を持ってほしいということです」
岡田「うーん」
* * *
岡田「J-WAVE GROWING REED。 今夜は映画監督の滝田洋二郎さんにお話を伺ってきました。ということで、あの、滝田さん…素敵な滝田さん、監督ですけども。なんかね、ホントにこう、いろいろ乗り越えて来られた方…なんですよね。そして映画を愛し、映画に命を懸けて、監督をされている…方なんですけど、ホントにご一緒する機会があって、幸せな時間を過ごせましたし、なんか、あの…こう…うーん、あの世代って言ったらおかしいですけど、すごくいろんなことを学ばしてもらえる現場だったなっていうのをすごく…思い出します。あの…何でもいいよっていう器のある、器のある…?何でもは良くないんだけど(笑)、何でも来ても、どうとでも出来るよっていう器のある、その…世代というか。すごいカッコイイなと思いますし、うーん…そんな滝田洋二郎監督。そして、僕が参加しました『天地明察』。ぜひ…そんなね、男たち…そんな人たちが、いっぱい作った作品ですので、ぜひ、劇場で、どんなもんか、観ていただけたら、うれしいなぁと思います。9月15日公開です。ぜひ劇場で観てください。お願いします。」
~Played songs~
『STAR CHASERS』 4 HERO
『MIDNIGHT AT THE OASIS』 BRAND NEW HEAVIES
『THE HARDEST PART』 COLDPLAY
『FIGHT THE POWER』 PUBLIC ENEMY
『荒野を行く』 奥田民生
『WHEN YOU WISH UPON A STAR』 BILLY JOEL
『STAR』 PRIMAL SCREAM
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